ENEOSの主張書面
被告準備書面(5)
被告準備書面(5)
令和6年12月17日
東京地方裁判所民事第19部に係 御中
目次
第1 緒言
第2 被告の主張
1 本件訴訟における原告の請求原因事実の要旨
2 本件訴訟における被告の反論の要旨
⑴ 本件規程等の違反は被告の債務不履行又は不法行為を構成しないこと
⑵ 本件訴訟は前回訴訟の確定判決の既判力により遮断されること
⑶ 本件訴訟は信義則に違反する紛争の蒸し返しであること
⑷ 被告による本件規程の違反が存在しないこと
⑸ 被告による信義則上の義務の違反も存在しないこと
⑹ 結論(本件訴訟における被告の反論の要旨)
第3 原告求釈明申立書に対する回答
第3-1 第1(被告の主張における「通報」と「通報情報」について)(1頁以下)について
第3-2 第2(調査事項に対応する「法令等」について)(2頁)について
第3-3 第3(本件規程3.5に定める是正措置及び再発防止策等の実行について)(2頁以下)について
第3-4 第4(本体GSTの支払について)(3頁)について
1 第4の1(本件GSTの支払と契約内容の関係に関する認否について)(3頁)について
2 第4の2(「GSTの法改正」に該当する法改正について)(3頁)について
第4 原告文書送付嘱託申立書に対する意見
1 意見
2 本件申立てが却下されるべき理由
⑴ 原告文書送付嘱託申立書第1の1 ⑴・⑵ に記載の文書
⑵ 原告文書送付嘱託申立書第1の1 ⑶ に記載の文書
⑶ 原告文書送付嘱託申立書第1の1 ⑷ に記載の文書
⑷ 原告文書送付嘱託申立書第1の1 ⑸・⑹ に記載の文書
⑸ 原告文書送付嘱託申立書第2の1 ⑴・⑵に記載の文書
⑹ 結論
第5 原告第4準備書面第2(原告の主張)(3頁以下)に対する認否
1 第2の1(本件訴訟における原告及び被告の主張)(3頁以下)について
⑴ 第2の1 ⑴(原告が主張する被告の違反行為について)(3頁以下)について
⑵ 第2の1 ⑵(被告の主張について)(4頁)について
⑶ 第2の1 ⑶(原告の主張について)(4頁以下)について
2 第2の2(被告は・・・誤った事実を認識させていた。)(5頁以下)について
⑴ 第2の2 ⑴(本件豪州企業に対する...説明していた。)(5頁以下)について
⑵ 第2の2 ⑵(本件豪州企業への・・・回答を行っていた。)(8頁以下)について
⑶ 第2の2 ⑶(あたかも・・・原告に隠していた。)(9頁以下)について
⑷ 第2の2 ⑷(豪州子会社が・・・原告に隠していた。)(11頁以下)について
⑸ 第2の2 ⑸(まとめ)(13頁)について
3 第2の3(前回訴訟の・・・許される。)(13頁以下)について
本書に用いる用語の意味は、本書に別段の定義のない限り、被告の令和6年8月9日付の「被告準備書面 ⑷ 」(以下「被告準備書面 ⑷ 」という。)までの被告の主張書面に定義するところによる。
本件訴訟における原告の主張は、答弁書第3の1に整理したところではあるが、原告第1準備書面以降の原告の主張によって判然としなくなっているところがあるので、現段階において原告が主張していると思われるところを善解しつつ整理すると、次のとおりである。
➀ 被告は、次のとおり被告の社内規程等に違反した。
被告は、原告から本件通報又は追加通報を受けて、被告において被告から本件豪州企業に対するGSTの支払が被告と本件豪州企業の間の契約内容に基づくものでなかったという事実を把握した(注1)。
当該事実は、本件規程3.6 ⑴ アにいう「法令等に違反する事実または違反するおそれのある事実」に該当する。
ところが、被告は、本件通報及び追加通報に係る本件規程3.6 ⑴ アに基づく調査結果の回答又は通知(乙第10号証・乙第11号証・乙第12号証)において、原告に対し、「コンプライアンス違反ではない」又は「不正行為等に該当しない」との通知をし、上記の事実を通知しなかった(注2)。
よって、被告は、本件規程3.6 ⑴ ア、行動基準(注3)第1項 ⑴ 、同第11項 ⑶ 、同第12項 ⑶ 、内部統制基本方針(注4)第5項 ⑴ 及び同 ⑷ に違反した(注5)。
被告は、原告から本件通報又は追加通報を受けて、被告において被告から本件豪州企業に対するGSTの支払が被告と本件豪州企業の間の契約内容に基づくものでなかったという事実を把握した(注6)。
当該事実は、本件規程3.6 ⑴ イにいう「法令等に違反する事実」又は同ウにいう「法令等に・・・違反するおそれのある事実」に該当する。
被告は、原告から本件通報又は追加通報を受けて、被告が本件豪州企業に対して支払ったGSTについて本件豪州企業から「返金を受け」たこと、2018年(平成30年)に被告と本件豪州企業の間で新たな契約を締結したこと(原告のいう「本件契約の措置」)、その他被告が本件豪州企業からGSTを請求されないための「何かしらの措置」を実行した(注7)。
これらの措置は、本件規程3.6 ⑴ イにいう「是正措置または再発防止策」又は本件規程3.6 ⑴ ウにいう「対応策」に該当する。
ところが、被告は、原告に対し、本件通報及び追加通報に関し、是正措置、再発防止策又は対応策を通知しなかった(注8)。
よって、被告は、本件規程3.6 ⑴ イ又は同ウに違反した(注9)。
(c) 「本件部長報告」に係る行動基準第11項 ⑶ 等の違反
平成29年10月16日に、原告の所属していた部署(原告のいう「本件事業部」)の担当者が、当該部署の部長を宛先、原告らをCCにして、「過年度JXTGエネルギーの支払分については ≪ 豪州子会社 ≫ にて17年9月までに還付請求を実施。また ≪ 豪州子会社 ≫ への還付額について、JXTGエネルギーへの戻入れも実施済み。」などと記載されていた電子メール(甲第20号証の1)(原告のいう「本件部長報告」)を送付した。
当該電子メールは、豪州税務当局から豪州子会社に対する還付と豪州子会社から被告に対する送金との関係について「判然としない」(注10)又は「不確かにしている」(注11)こと、当該電子メールに言及している還付が存在しなかった「可能性がある」(注12)又は「疑いが拭えない」(注13)こと、当該電子メールに言及している法改正が存在しない「可能性がある」こと(注14)など、「正確性に疑念がある」(注15)ものであったから、「事実に基づき、正確に、遺漏なく」作成されたとはいえない(注16)。
よって、被告は、行動基準第1項 ⑴ 、同第11項 ⑶ 、同第12項 ⑶ 、内部統制基本方針第5項 ⑴ 及び同 ⑷ に違反した(注17)。
被告は、原告から本件通報又は追加通報を受けて、被告において被告から本件豪州企業に対するGSTの支払が被告と本件豪州企業の間の契約内容に基づくものでなかったという事実を把握した(注18)。
当該事実は、本件規程3.5にいう「法令等に違反する事実または違反するおそれのある事実」に該当する。
被告は、2018年(平成30年)に被告と本件豪州企業の間で新たな契約を締結したこと(原告のいう「本件契約の措置」)のほかには、効果的な再発防止策を実行しなかった(注19)。
よって、被告は、本件規程3.5、行動基準第12項 ⑶ 、同第14項 ⑶ 、内部統制基本方針第5項 ⑴ 及び同 ⑷ に違反した(注20)。
➁ したがって、被告は、原告に対し、債務不履行(民法第415条)又は不法行為(民法第709条)に基づく損害賠償責任を負う。
原告の主張が前記1のとおりであるとすると、これに対する被告の反論の要旨は、次のとおりである。
⑴ 本件規程等の違反は被告の債務不履行又は不法行為を構成しないこと
本件規程は、各規定の主語が「本規程の運用を統括する責任者は」、「従業員等は」、「通報者は」、「法務部長は」、「対応者は」等となっていることからも明らかなとおり、被告の各役員又は従業員の職務を規定するものであって、法人たる被告の義務を定めているのでもなければ、原告を含む被告の従業員に対する義務を定めているわけでもなく、その違反が債務不履行に基づく損害賠償責任を生ぜしめるような何らかの義務を定めたものでもない。すなわち、本件規程は、被告の会社組織内の自律的な規範にとどまるものであって、就業規則のように法人たる被告と原告を含む従業員との間に直接の権利義務又は債権債務を生ぜしめるものではない。
本件規程が被告と従業員の間に何らかの権利義務関係を生ぜしめるとすれば、本件規程によって(被告に内部通報制度が設けられることによって)、被告の従業員が内部通報制度の通報窓口に通報をしたときに、当該通報の具体的状況の如何によっては、被告が、当該従業員に対し、当該通報を受け、体制として整備された仕組みの内容、当該通報に係る相談の内容に応じて適切に対応すべき信義則上の義務を負う場合がある、というものである(注21)。
よって、本件規程3.6 ⑴ ア(前記1 ➀(a))、同イ・ウ(前記1 ➀(b))、又は同3.5(前記1 ➀(d))の違反があったとしても、それだけでは被告の原告に対する債務不履行又は不法行為を構成するものではなく、被告が本件通報又は追加通報に関して原告に対して上記の信義則上の義務を負うと認められる場合であって、かつ被告が当該信義則上の義務に違反したと認められる場合でなければ、被告は、原告に対し、債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償責任を負うものではない。
行動基準は、その「はじめに」「1.『ENEOSグループ行動基準』の位置づけ」に定めるとおり、「ENEOSグループで働く私たち」(すなわちENEOSグループ(被告を含む。)の役員及び従業員)が「実践すべき基準」であり、「事業活動における判断の拠り所」となるにとどまるものであって(甲第2号証の1)、法人たる被告の義務を定めているのでもなければ、原告を含む被告の従業員に対する義務を定めているわけでもなく、その違反が債務不履行に基づく損害賠償責任を生ぜしめるような何らかの義務を定めたものでもない。すなわち、行動基準も、就業規則のように法人たる被告と原告を含む従業員との間に直接の権利義務又は債権債務を生ぜしめるものではない。
よって、行動基準第1項 ⑴(前記1 ➀(a)・(c))、同第11項 ⑶(前記1 ➀(a)・(c))、同第12項 ⑶(前記1 ➀(a)・(c)・(d))又は同第14項 ⑶(前記1 ➀(d))の違反があったとしても、被告の原告に対する債務不履行又は不法行為を構成するものではない。
内部統制基本方針は、被告を含むENEOSグループにおいて業務の適正を確保するための体制(内部統制システム)を整備・運用するうえでの「基本方針」を定めるものであり、被告の取締役が株式会社たる被告又はその株主に対して負っている義務又はその基本方針を定めるものではあっても(注22)、法人たる被告の義務を定めているのでもなければ、原告を含む被告の従業員に対する義務を定めているわけでもない。すなわち、内部統制基本方針も、就業規則のように法人たる被告と原告を含む従業員との間に直接の権利義務又は債権債務を生ぜしめるものではない。
よって、内部統制基本方針第5項 ⑴ 又は同 ⑷(前記1 ➀(a)・(c)・(d))の違反があったとしても、被告の原告に対する債務不履行又は不法行為を構成するものではない。
⑵ 本件訴訟は前回訴訟の確定判決の既判力により遮断されること
答弁書第3の3(9頁以下)に述べたとおり、前回訴訟における前回訴訟争点1に係る損害賠償請求も、本件訴訟における損害賠償請求も、本件通報及び追加通報に関して被告が原告に対する信義則上の義務に違反したことを理由として債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償を請求するものであるから、訴訟物は同一である。
また、原告が「本件訴訟主要事実」(注23)として記載する各事実を含む前記1 ➀(a)・(b)・(d)に述べた各事実は、前回訴訟争点1に係る通報と同一の(本件通報及び追加通報)に関するものである以上は、同一の信義則上の義務の違反の評価根拠事実を新たに追加するものにとどまる。
加えて、答弁書第3の3(9頁以下)に述べたとおり、原告は、本件訴訟において、前回訴訟の控訴審の口頭弁論終結後に生じた新たな事由を主張しているわけでもない。
よって、答弁書第3の3(9頁以下)に述べたとおり、本件訴訟における原告の請求のうち前記1 ➀(a)・(b)・(d)に係るものは、確定した前回訴訟控訴審判決の既判力(民事訴訟法第114条第1項)によって遮断され、かつ理由がない。
答弁書第3の4(10頁以下)に述べたとおり、本件訴訟における原告の請求は、実質的には前回訴訟の蒸し返しにほかならず、前回訴訟において本件訴訟における請求をすることにも何ら支障はなかった。
具体的には、まず、被告準備書面 ⑵ 第2の1 ⑸ キ(9頁以下)に述べたとおり、前記1 ➀(b)に関しても、原告は、前回訴訟において原告のいう「本件訴訟主要事実」(原告に対して是正措置、再発防止策又は対応策を実施したとの通知をしなかったという事実(本件規程3.6 ⑴ イ又はウの違反))を主張することも、全く困難ではなかったはずである。
また、原告は、前記1 ➀(c)に係る行為によって、本件豪州企業に対するGSTの支払が契約内容に基づかないという事実に対して講じられた措置を把握できない状況に置かれ、前記1 ➀(b)に係る事実を主張することが困難になったと主張したいもののようであるが(注24)後記 ⑷ ウに述べるとおり、そもそも、前記11(c)に係る行為は、原告の所属していた部署の担当者が当該部署の部長に対して報告をしたものに過ぎず(甲第20号証の1)、被告又は被告の調査補助者が原告に対して本件通報に関して通知又は情報共有をしたものではないので、被告又はその履行補助者が原告の主張を困難にしたわけでもない。
よって、答弁書第3の4(10頁以下)に述べたとおり、本件訴訟における原告の訴えのうち前記1 ➀(a)・(b)・(d)に係るものは、仮に確定した前回訴訟控訴審判決の既判力によって遮断されないとしても、信義則に照らして許されるものではなく(注25)、不適法である。
ア 本件規程3.6 ⑴ アの違反(前記1 ➀(a))同3.5の違反(前記1 ➀(d))の不存在
そもそも、一般に、GST(Goodsand Services Tax(物品サービス税/付加価値税)は、当該GSTについて定める法令に基づいて支払う必要があるものであって、契約に基づいて支払う必要が生ずるものではなく、契約の定めの有無・内容にかかわらず、法令上GSTの課税される取引であれば、GSTを支払う必要があるし、法令上GSTの課税されない取引であれば、GSTを支払う必要はない。そして、GSTが課税されるか否かは個別の取引の性質よって取引毎に異なるため、GSTの課税されない取引についてGSTを支払ったり、支払済みのGSTの還付申請がされなかったりしたとしても、直ちにコンプライアンス違反となるわけでもない(乙第10号証)。
よって、本件通報及び追加通報に関しても、被告から本件豪州企業に対するGSTの支払が被告と本件豪州企業の間の契約内容に基づくものであったか否かは、「不正行為等」があったか否かには直接の関係がないし、仮にGSTの支払が契約内容に基づくものでなかったという事実があったとしても、「不正行為等」があったことになるわけではない。
したがって、本件通報及び追加通報に関しては、本件規程3.6 ⑴ ア・同3.5にいう「法令等に違反する事実または違反するおそれのある事実」がなかったのであるから、被告の調査補助者が、本件通報及び追加通報に係る調査結果の回答又は通知(乙第10号証・乙第11号証・乙第12号証)において、原告に対し、「コンプライアンス違反ではない」又は「不正行為等に該当しない」との通知をし、GSTの支払が契約内容に基づくものでなかったという事実を通知しなかったことも、本件規程3.6 ⑴ アに違反するものではないし、被告が効果的な再発防止策を実行しなかったとしても、本件規程3.5に違反するものではない。
イ 本件規程3.6 ⑴ イ・ウの違反(前記1 ➀(b))の不存在
答弁書第3の5(12頁以下)に述べたとおり、本件通報及び追加通報に関する調査結果は、本件規程3.6 ⑴ イにいう「法令等に違反する事実が確認された場合」又は本件規程3.6 ⑴ ウにいう「法令等に違反するおそれのある事実が確認された場合」のいずれでもなかったのであるから、被告が、原告に対し、本件通報及び追加通報に関し、是正措置、再発防止策又は対応策を通知しなかったことは、本件規程3.6 ⑴ イ又はウに違反するものではない。
前記1 ➀(c)に係る行為についていうと、甲第20号証の1の電子メール(原告のいう「本件部長報告」)は、原告の所属していた部署の担当者が当該部署の部長に対して報告をしたものに過ぎず、被告又は被告の調査補助者が原告に対して本件通報に関して通知又は情報共有をしたわけではない。
とすれば、仮に行動基準が被告の原告に対する義務を定めたものであると仮定しても、前記1 ➀(c)に係る行為は、被告又はその履行補助者が原告に対して行った行為でない以上は、被告においてそのような義務に違反したことになるものではない。
しかも、前記11(c)にいう電子メール(甲第20号証の1)は、単に、原告にとって、「判然としない」又は「不確か」な部分があったり、そこに言及されている事実が存在しない「可能性がある」又は「疑いが拭えない」と思えたりするというだけであって、「事実に基づき、正確に、遺漏なく」作成されたものでないことを示す客観的事実があるわけでもない。
答弁書第3の6(13頁以下)に述べたとおり、また確定した前回訴訟控訴審判決も判示をしているとおり(注26)、本件通報又は追加通報において原告が通報をした内容は、GSTの還付又はその会計処理に関する疑義であって、それによって原告が直接被害を受けるようなものではないから、被告が、原告に対し、当然に本件通報に適切に対応すべき信義則上の義務を負うということはできない。
よって、仮に本件通報又は追加通報に関する対応に本件規程等の違反があったと仮定しても、被告が、原告に対し、当然に本件通報又は追加通報に適切に対応すべき信義則上の義務に違反したということはできない。
以上からすると、前記 ⑶ により、本件訴訟における原告の訴えは、不適法として却下されるべきであり、そうでなくても、前記 ⑵、⑷ 又は ⑸ により、本件訴訟における原告の請求は、理由がないものとして棄却されるべきである。
原告の令和6年11月25日付の「求釈明申立書」(以下「原告求釈明申立書」という。)における原告の求釈明に対する被告の回答は、以下のとおりである。
第3-1 第1(被告の主張における「通報」と「通報情報」について)(1頁以下)について
「通報情報」は、「通報にかかる情報」であり(本件規程1.2 ⑹ )、「通報」は、「不正行為等を発見し、または不正行為等が行われている旨の報告を受けたとき」又は「不正行為等を内容とする職務命令を受けたとき」に、当該不正行為等の「内容を告げる行為」であるから(本件規程1.2 ⑸ )、「通報情報」とは、通報において告げられた不正行為等の内容たる情報を意味する。
よって、確定した前回訴訟控訴審判決も判示するとおり、「事実経過の説明として記載されたにすぎない事項や、調査の過程で調査補助者に告げたにすぎない疑問事項等が、当然に通報又は通報情報として調査の対象になるとはいえ」ないのであって(注27)(乙第3号証)、そのような事項等は、何らかの「不正行為等の内容」を「告げる」ものであって初めて「通報」に該当し、その「不正行為等の内容」たる情報が「通報情報」に該当する。
したがって、被告の主張において「通報」として扱っているのも、
・本件通報(原告が平成28年9月14日に本体内部通報制度の社内通報窓口の電子メールアドレス宛に行った内部通報)、及び
・追加通報(原告が平成30年11月27日に本件内部通報制度の社内通報窓口の電子メールアドレス宛に行った内部通報)
であり、被告の主張において「通報情報」として扱っているのも、
・本件通報に係る通報用フォーム(乙第2号証)に記載された情報及びその後に原告が調査補助者に提供した情報のうち、「不正行為等」に該当するか否かが問題となる行為)の内容たる情報(注28)、並びに
・追加通報に係る通報用フォーム(乙第9号証)に記載された情報及びその後に原告が調査補助者に提供した情報のうち、「不正行為等」に該当するか否かが問題となる行為)の内容たる情報(注29)
である。
なお、原告が原告第1準備書面第1の3 ⑴ ウ(5頁)において「調査補助者に対する追加通報」と定義するところのものは、本件通報後に原告が調査補助者に対して通知し又は質問した事項であるところ、直接には本件通報とは別途に何らかの「不正行為等」の内容を告げるものではなかったので、本件通報に付随又は関連する情報であるにとどまり、被告の主張においては、本件通報とは別個の「通報」とは扱っていないし、当該事項の内容たる情報も「通報情報」とは扱っていない。
第3-2 第2(調査事項に対応する「法令等」について)(2頁)について
原告の求釈明の内容は、訴訟関係を明瞭にするため(民事訴訟法第149条)のものとはいえないので、被告において回答する必要を認めない。
第3-3 第3(本件規程3.5に定める是正措置及び再発防止策等の実行について)(2頁以下)について
そもそも、「法令等に違反する事実が確認された場合」又は「法令等に違反するおそれのある事実が確認された場合」のいずれでもなかったのであるから、本件規程3.5に定める是正措置及び再発防止策の実行は必要でなかったのであるし、被告が原告のいう「本件豪州企業」との間で原告の指摘する内容の契約を締結したのも、本件規程3.5に定める是正措置又は再発防止策等として行ったわけではない。
被告が被告準備書面⑶第2の3⑹イ(14頁)において「否認する」と主張しているのも、上記の理由による。
1 第4の1(本件GSTの支払と契約内容の関係に関する認否について)(3頁)について
前記第2の2 ⑷ アに述べたとおり、被告から本件豪州企業に対するGSTの支払が被告と本件豪州企業の間の契約内容に基づくものであったか否かは、「不正行為等」があったか否かには直接の関係がないし、仮にGSTの支払が契約内容に基づくものでなかったという事実があったとしても、「不正行為等」があったことになるわけではない。
被告が被告準備書面 ⑶ 第2の2 ⑶ (7頁) において「争う」と主張しているのも、上記の理由による。
2 第4の2(「GSTの法改正」に該当する法改正について)(3頁)について
原告の求釈明の内容は、訴訟関係を明瞭にするため(民事訴訟法第149条)のものとはいえないので、被告において回答する必要を認めない。
原告の令和6年11月25日付の「文書送付嘱託申立書」(以下「原告文書送付嘱託申立書」という。)における文書送付嘱託の申立て(以下「本件申立て」という。)について、以下のとおり被告の意見を述べる。
本件申立ては、却下されるべきである。
原告が原告文書送付嘱託申立書において送付を求めている文書(同申立書第1の1 ⑴ から ⑹ までに記載の文書及び第2の1 ⑴ 及び ⑵ に記載の文書)(以下「本件文書」という。)のうち、同申立書第1の1 ⑴ 及び同 ⑵ に記載の各文書は、被告が本件訴訟の書証として提出済みである(乙第13号証・乙第14号証)。
本件文書のうち、原告文書送付嘱託申立書第1の1 ⑶ に記載の文書(HDグループコンプライアンス方針)は、原告が本件訴訟を提起した後の令和6年4月に、被告のチーフコンプライアンスオフィサーが策定し、被告の社内ネットワークにおいて掲示されたものである。
よって、原告文書送付嘱託申立書第1の1 ⑶ に記載の文書は、本件訴訟の請求原因事実とは無関係であることが明らかなものであり、証拠調べをする必要性がない。
本件文書のうち、原告文書送付嘱託申立書第1の1 ⑷ に記載の文書(第1回ENEOSコンプライアンス委員会における役員コミットメント)も、原告が本件訴訟を提起した後の令和6年7月に、HDグループコンプライアンス方針(同申立書第1の1 ⑶ に記載の文書)に基づいて被告の各役員が作成し、被告の社内ネットワークにおいて掲示されたものである。
よって、原告文書送付嘱託申立書第1の1 ⑷ に記載の文書も、本件訴訟の請求原因事実とは無関係であることが明らかなものであり、証拠調べをする必要性がない。
本件文書のうち、原告文書送付嘱託申立書第1の1 ⑸ 及び同 ⑹ に記載の各文書も、その日付がそれぞれ「令和6年10月29日付」又は「令和6年5月23日付」となっていることからも明らかなとおり、原告が本件訴訟を提起した後に電子メールをもって発信されたものである。
よって、原告文書送付嘱託申立書第1の1 ⑸ 及び同 ⑹ に記載の文書は、本件訴訟の請求原因事実とは無関係であることが明らかなものであり、証拠調べをする必要性がない。
本件文書のうち、原告文書送付嘱託申立書第1の1 ⑴ 及び同 ⑵ に記載の文書は、原告が、前記第2の10(c)の事実を証明するために送付を求めているものであると思われるところ(同申立書第2の3)、前記第2の2 ⑴ イ・同ウ・同⑷ウに述べたところからすると、仮に当該文書によって同申立書第2の3の「証明すべき事実」が証明されたとしても、被告の原告に対する債務不履行又は不法行為が成立するわけではない。
よって、原告文書送付嘱託申立書第1の2 ⑴ 及び同 ⑵ に記載の文書も、証拠調べをする必要性がない。
しかも、被告内部通報制度は、「ENEOSグループにおける法令等に違反する行為または違反するおそれのある行為・・・について、これを早期に是正」し、「もって、ENEOSグループのコンプライアンス体制を強化することを目的とする」ものであり(乙第1号証)、内部通報制度一般の意義も、「法令遵守の推進や組織の自浄作用の向上に寄与し、ステークホルダーや国民からの信頼の獲得にも資する」繋げることにあるのであって(注30)、通報者のために若しくは通報者に代わって通報に係る個別具体的な事実関係を調査すること又は通報者の納得若しくは満足を得ることを目的としているわけではない。
ところが、原告文書送付嘱託申立書第1の2 ⑴ 及び同 ⑵ に記載の文書は、「証明すべき事実」が証明されたとしても、被告の原告に対する債務不履行又は不法行為が成立するわけではないというだけでなく、被告内部通報制度の目的を逸脱して、被告が本件通報又は追加通報に関する調査を行った際の調査資料を開示させようとするものにほかならないから、本件申立てのうち原告文書送付嘱託申立書第1の2 ⑴ 及び同 ⑵ に記載の文書に係る部分は、濫用的な申立てであるといわざるを得ない。
以上のとおりであるから、本件申立ては、直ちに却下されるべきである。
第5 原告第4準備書面第2(原告の主張)(3頁以下)に対する認否
原告の令和6年11月25日付の「原告第4準備書面」(以下「原告第4準備書面」という。)の第2(原告の主張)(3頁以下)における原告の主張に対する被告の認否は、以下のとおりである。
1 第2の1(本件訴訟における原告及び被告の主張)(3頁以下)について
⑴ 第2の1 ⑴(原告が主張する被告の違反行為について)(3頁以下)について
争う。
なお、原告の主張の要旨は、前記第2の1に詳述したとおりである。
認める。
被告の主張の要旨は、前記第2の2に詳述したとおりである。
特に認否しない。
2 第2の2(被告は...誤った事実を認識させていた。)(5頁以下)について
⑴ 第2の2 ⑴(本件豪州企業に対する・・・説明していた。)(5頁以下)について
ア 第2の2 ⑴ ア(「被告の主張においては」以下)(5頁)について
概ね認める。
イ 第2の2 ⑴ イ(「既に述べたとおり」以下)(6頁)について
認める。
認める。
エ 第2の2 ⑴ エ(「表7の(ア)に」以下)(6頁)について
第1段落(「表7の(ア)に」以下)は認めるが、第2段落(「そのため」以下)は否認する。
オ 第2の2 ⑴ オ(「表7の(イ)に」以下)(6頁以下)について
原告第4準備書面5頁の表7の(イ)に示す通知事項(調査結果の通知)(乙第11号証)に、原告の引用する記載があること、当該通知事項に「質問票」の内容や日付が記載されていないこと、原告が被告と本件豪州企業との契約の内容について調査が行われたかどうかについて確認できない状況であったことは、それぞれ認めるが、その余は、否認する。
乙第11号証の電子メールに記載の「質問票」は、原告の調査補助者に対する2017年(平成29年)7月28日14時17分送信の電子メール(甲第16号証の7)に添付されていた「付加価値税_GMへの確認.xlsx」と題する Excel ファイルを意味し、甲第16号証の7に「もう一つの Excel ファイル」と記載されているところのものである。そして、そのことは、原告自らが甲第16号証の7の電子メールにおいて当該ファイルについて「(GMへ)確認する内容」であると記載していることからも容易に理解可能である。
カ 第2の2 ⑴ カ(「表7の(ウ)に」以下)(7頁)について
認める。
キ 第2の2 ⑴ キ(「調査補助者が」以下)(7頁)について
認める。
ク 第2の2 ⑴ ク(「以上のとおり」以下)(7頁)について
被告の調査補助者が原告に対して契約書を確認するという行為は意味がない行為である旨を説明していたことは認めるが、その余は否認する。
⑵ 第2の2 ⑵(本件豪州企業への・・・回答を行っていた。)(8頁以下)について
認める。
平成27年11月の支払手続によるGSTの支払については、認める。その余の支払については、「原告の支払手続による」ものか否かが不明であるため不知であるが、特に争わない。
否認する。
認める。
オ 第2の2 ⑵ オ(「以上のとおり」以下)(8頁以下)について
否認する。
⑶ 第2の2 ⑶(あたかも・・・原告に隠していた。)(9頁以下)について
ア 第2の2 ⑶ ア(「被告も認めるとおり」以下)(9頁)について
認める。
認める。
認める。
エ 第2の2 ⑶ エ(「そのため、本件豪州企業で」以下)(10頁)について
争う。
甲第20号証の1にも記載のあるとおり、「〔20〕17年1月~4月の当社へのGST請求分については、〔同年〕5月の請求から1~4月に支払済みのGSTを差し引く形で精算」したのであり、「〔20〕17年1月~4月の当社へのGST請求分」の「返金」を受けたわけではないので、「精算済み」のほうが「返金された」よりも適切な表現である。
事実上の主張としては否認し、法律上の主張としては争う。
被告が何らかの事実を原告に「隠していた」などというのは、原告の邪推でしかない。
認める。
キ 第2の2 ⑶ キ(「そのため、原告と」以下)(10頁)について
不知である。
ク 第2の2 ⑶ ク(「以上のとおり」以下)(10頁以下)について
事実上の主張としては否認し、法律上の主張としては争う。
被告が何らかの事実を原告に「隠していた」などというのは、原告の邪推でしかない。
⑷ 第2の2 ⑷(豪州子会社が・・・原告に隠していた。)(11頁以下)について
ア 第2の2 ⑷ ア(「被告の主張によって」以下)(11頁)について
認める。
イ 第2の2 ⑷ イ(「原告と」以下)(11頁以下)について
認める。
争う。
そもそも、「報告していないこと」が「不確かにしている」という因果関係が不明である。
否認し又は不知である。
豪州子会社が豪州税務当局から還付を受けていないなどというのは、原告の邪推でしかない。
オ 第2の2 ⑷ オ(「豪州子会社による」以下)(12頁)について
認める。
カ 第2の2 ⑷ 力(「以上のとおり」以下)(12頁)について
事実上の主張としては否認し、法律上の主張としては争う。
被告が何らかの事実を原告に「隠していた」などというのは、原告の邪推でしかない。
第1段落(「被告は、原告に対し、以下のような」以下)は認めるが、第2段落(「被告は、原告に対して行動基準」以下)は否認する。
3 第2の3(前回訴訟の...許される。)(13頁以下)について
争う。
以上
被告準備書面(4)
被告準備書面(4)
令和6年8月9日
東京簡易裁判所民事第5室6係B 御中
目次
第1 緒言
第2 原告第3準備書面第1(原告の主張)に対する認否
1 第1の1(被告の主張に対する反論)(2頁以下)について
⑴ 第1の1 ⑴ (被告には...義務があること)(2頁以下)について
⑵ 第1の1 ⑵ (被告が・・・債務があること)(3頁以下)について
⑶ 第1の1 ⑶ (被告の・・・正当とはいえないこと)(4頁以下)について
⑷ 第1の1 ⑷ (まとめ)(7頁)について
2 第1の2(被告の認否について)(7頁以下)について
第3 訂正後の原告第1準備書面・原告第2準備書面に対する認否
第4 文書送付嘱託申立てについて
第1 緒言
本書に用いる用語の意味は、本書に別段の定義のない限り、被告の令和6年7月25日付の「被告準備書面 ⑶ 」(以下「被告準備書面 ⑶ 」という。)までの被告の主張書面に定義するところによる。
第2 原告第3準備書面第1(原告の主張)に対する認否
原告の令和6年8月9日付の「原告第3準備書面」(以下「原告第3準備書面」という。)の第1(原告の主張)(2頁以下)における原告の主張に対する被告の認否は、以下のとおりである。
⑴ 第1の1 ⑴ (被告には...義務があること)(2頁以下)について
認める。
イ 第1の1 ⑴ イ(「要するに」以下)(2頁以下)について
認める。
ウ 第1の1 ⑴ ウ(「しかしながら」以下)(3頁)について
認める。
争う。
仮に被告が何者かに対して原告の主張するような義務を負っているとしても、少なくとも被告がその従業員(原告を含む。)に対して負っている義務ではない。
⑵ 第1の1 ⑵ (被告が・・・債務があること)(3頁以下)について
ア 第1の1 ⑵ ア(「被告は、被告の」以下)(3頁)について
認める。
イ 第1の1 ⑵ イ(被告は、行動基準」以下)(3頁以下)について
争う。
仮に被告が何者かに対して原告の主張するような義務を負っているとしても、少なくとも被告がその従業員(原告を含む。)に対して負っている義務ではない。
ウ 第1の1 ⑵ ウ(被告は、被告の」以下)(4頁)について
争う。
⑶ 第1の1 ⑶ (被告の・・・正当とはいえないこと)(4頁以下)について
ア 第1の1 ⑶ ア(「被告は、本件通報」以下)(4頁以下)について
認める。
イ 第1の1 ⑶ イ(「事実Aに関して」以下)(5頁)について
認める。
ウ 第1の1 ⑶ ウ(「しかしながら」以下)(5頁)について
事実上の主張としては否認し、法律上の主張としては争う。
エ 第1の1 ⑶ エ(「事実Bに関して」以下)(5頁)について
否認する。
「追加通報に係る調査の結果」のみでは「判然としない」という限度で、認める。
カ 第1の1 ⑶ カ(「事実Cに関して」以下)(6頁)について
認める。
キ 第1の1 ⑶ キ(「しかしながら」以下)(6頁)について
一般論である限りにおいて、認める。
事実上の主張としては否認し、法律上の主張としては争う。
争う。
コ 第1の1 ⑶ コ(「以上のとおり」以下)(6頁)について
争う。
争う。
争う。
争う。
第3 訂正後の原告第1準備書面・原告第2準備書面に対する認否
原告の令和6年8月9日付の「訂正申立書」(以下「原告訂正申立書」という。)による原告第1準備書面及び原告第2準備書面の訂正にもかかわらず(以下、原告訂正申立書による訂正後の原告第1準備書面及び原告第2準備書面を、それぞれ「原告第1準備書面」及び「原告第2準備書面」という。)、被告準備書面 ⑶ までの被告の主張書面における被告の認否及び主張に変更はない。
原告は、原告第2準備書面「はじめに」第3段落(3頁)において、甲第27号証以降の書証については、原告の主張に対する適切な認否が行われた後に文書送付嘱託を申し立てると述べ(原告訂正申立書2 ⑴ (2頁)、原告第3準備書面第1の2柱書第5段落(「引き続き」以下)(8頁)において、被告が準備書面において否認の理由を記載しない場合は、裁判所に対して文書送付嘱託を申し立てると述べている。
しかし、文書の送付を嘱託するためには、その文書につき証拠調べをする必要性があることを要するところ(民事訴訟法第181条第1項)、原告が原告第3準備書面第1の2以下において「明らかにすべき」と主張している「否認」又は「争う」の理由は、その理由の如何によって、本件訴訟の争点あるいは原告の主張に理由があるか否かの認定に影響を及ぼすものでない。
よって、原告がいかなる文書について文書送付嘱託を申し立てるかにかかわらず、証拠調べをする必要性がない。
したがって、仮に原告が文書送付嘱託を申し立てたとしても、当該申立ては直ちに却下されるべきである。
以上
被告準備書面(3)
被告準備書面(3)
令和6年7月25日
東京簡易裁判所民事第5室6係B 御中
目次
第1 緒言
第2 原告第2準備書面第1(原告の主張)に対する認否
1 第1の1(行動基準及び本件規程の解釈について)(3頁以下)について
⑴ 第1の1 ⑴ (行動基準は・・・拠り所となるものであること)(3頁以下)について
⑵ 第1の1 ⑵ (「事実に基づき、正確に、遺漏なく」・・・対象であること)(4頁)について
⑶ 第1の1 ⑶ (被告は、・・・通知をする義務があること)(5頁)について
⑷ 第2の1 ⑷ (被告は、・・・実行する義務があること)(6頁)について
2 第1の2(通報情報に関する事実について)(7頁以下)について
⑴ 第1の2柱書(「本件通報、追加情報」以下)(7頁)について
⑵ 第1の2 ⑴ (通報情報及びこれに対する調査補助者の応答)(7頁以下)について
⑶ 第1の2 ⑵ (事実A 原告が本件支払手続をした行為)(9頁以下)について
⑷ 第1の2 ⑶ (事実B 上司Aが還付手続で対応する旨を説明した行為)(10頁以下)について
⑸ 第1の2 ⑷ (事実C 豪州子会社が金銭の流れが判然としない金銭を送金した行為)(11頁)について
3 第1の3(被告の行動基準及び本件規程に違反する行為について)(12頁以下)について
⑴ 第1の3柱書(「本件通報、追加通報及び」以下)(12頁)について
⑵ 第1の3 ⑴ (被告が、・・・把握していたこと)(13頁以下)について
⑶ 第1の3 ⑵ (被告が、・・・通知したこと)(14頁以下)について
⑷ 第1の3 ⑶ (違反A・・・伏せた行為)(15頁以下)について
⑸ 第1の3 ⑷ (違反B・・・通知した行為)(17頁以下)について
⑹ 第1の3 ⑸ (違反C・・・実行しなかった行為)(18頁以下)について
4 第1の4(原告が・・・被った精神的損害)(19頁以下)について
⑴ 第1の4 ⑴ (被告の行動基準違反及び本件規程違反)(19頁以下)について
⑵ 第1の4 ⑵ (業務プロセスがかかわるトラブルに関する状況)(20頁以下)について
⑶ 第1の4 ⑶ (原告が被った精神的損害)(21頁)について
5 第1の5(まとめ)(22頁)について
6 第1の6(本件訴訟における原告の主張は許される)(22頁以下)についてv
⑴ 第1の6 ⑴ (既判力が..当たらない)(22頁以下)について
⑵ 第1の6 ⑵ (本件訴訟における...許される)(24頁以下)について
第3 原告第2準備書面第2による「補正」後の原告の主張に対する認否
本書に用いる用語の意味は、本書に別段の定義のない限り、被告の令和6年5月23日付の「被告準備書面(2)(以下「被告準備書面(2)」という。)までの被告の主張書面に定義するところによる。
原告の令和6年7月19日付の「原告第2準備書面」(以下「原告第2準備書面」という。)の第1(原告の主張)(3頁以下)における原告の主張に対する被告の認否は、以下のとおりである。
1 第1の1(行動基準及び本件規程の解釈について)(3頁以下)について
⑴ 第1の1 ⑴ (行動基準は・・・拠り所となるものであること)(3頁以下)について
認める。
⑵ 第1の1 ⑵ (「事実に基づき、正確に、遺漏なく」・・・対象であること)(4頁)について
認める。
⑶ 第1の1 ⑶ (被告は、・・・通知をする義務があること)(5頁)について
ア 第1の1 ⑶ ア(「本件規程3.6 ⑴ に」以下)(5頁)について
認める。
認める。
争う。
エ 第1の1 ⑶ エ(「以上のとおり」以下)(5頁)について
本件規程3.6 ⑴ に定める通知の内容が、正当であることはもちろんのこと、行動基準第11項 ⑶ に定める「事実に基づき、正確に、遺漏なく」作成された情報であることが求められることについては、認めるが、その余については、争う。
本件規程3.6 ⑴ の文言からも明らかなとおり、本件規程3.6 ⑴ は、調査終了時の「法務部長」の職務を定めているのであって、法人たる「被告」の「義務」を定めているのではない。
⑷ 第2の1 ⑷ (被告は、・・・実行する義務があること)(6頁)について
ア 第1の1 ⑷ ア(「本件規程3.5に」以下)(6頁)について
認める。
認める。
争う。
エ 第1の1 ⑷ エ(「以上のとおり」以下)(6頁)について
本件規程3.5に定める是正措置及び再発防止策等の内容が、正当であることはもちろんのこと、行動基準第11項 ⑶ に定める「事実に基づき、正確に、遺漏なく」作成された情報であることが求められることについては、認めるが、その余については、争う。
本件規程3.5の文言からも明らかなとおり、本件規程3.5は、「対応者」、すなわち「法務部長およびコンプライアンス責任者」(本件規程3.4 ⑵ )の職務を定めているのであって、法人たる「被告」の「義務」を定めているのではない。
2 第1の2(通報情報に関する事実について)(7頁以下)について
⑴ 第1の2柱書(「本件通報、追加情報」以下)(7頁)について
特に争わない。
⑵ 第1の2 ⑴ (通報情報及びこれに対する調査補助者の応答)(7頁以下)について
ア 第1の2 ⑴ ア(「原告が平成28年9月14日」以下)(7頁)について
認める。
原告が本件通報にあたって通報用フォームの「法令等違反を行った者・部署等」の欄を空欄にしたことは、認めるが、その余は、不知である。
認める。
エ 第1の2 ⑴ エ(「原告が、調査補助者に対する」以下)(8頁)について
認める。
オ 第1の2 ⑴ オ(「調査補助者が」以下)(8頁以下)について
認める。
⑶ 第1の2 ⑵ (事実A 原告が本件支払手続をした行為)(9頁以下)について
争う。
原告が原告のいう「本件支払手続」をした行為は、本件通報に係る調査の結果、コンプライアンス違反ではない(法令等に違反するものではない)と結論づけられたものである(乙第3号証・乙第10号証・乙第11号証)。
よって、答弁書にも述べたとおり(注1)、本件通報に関する調査結果は、「法令等に違反する事実が確認された場合」又は「法令等に違反するおそれのある事実が確認された場合」のいずれでもなかったのであるから、本件通報について、本件規程3.6 ⑴ イ及びウに基づく通知は必要でない。
⑷ 第1の2 ⑶ (事実B 上司Aが還付手続で対応する旨を説明した行為)(10頁以下)について
認める。
否認する。
ウ 第1の2 ⑶ ウ(「また、被告においては、本件調査報告1」以下)(10頁)について
否認する。
エ 第1の2 ⑶ エ(「また、被告においては、上記アの」以下)(10頁)について
認める。
争う。
上司Aが還付手続で対応する旨を説明した行為は、追加通報に係る調査の結果、「不正行為等には該当しない」「対応に懈怠は認められなかった」と結論づけられたものである(乙第12号証〔7頁〕)。
カ 第1の2 ⑶ カ(「以上のとおり」以下)(10頁以下)について
争う。
追加通報に関する調査結果も、「法令等に違反する事実が確認された場合」又は「法令等に違反するおそれのある事実が確認された場合」のいずれでもなかったのであるから、上司Aが還付手続で対応する旨を説明した行為は、本件規程3.5又は行動基準第14項(3)に定める是正措置及び再発防止策の実行は必要でない。
⑸ 第1の2 ⑷ (事実C 豪州子会社が金銭の流れが判然としない金銭を送金した行為)(11頁)について
ア 第1の2 ⑷ ア(「豪州子会社が」以下)(11頁)について
認める。
イ 第1の2 ⑷ イ(「被告においては」以下)(11頁)について
認める。
認める。
エ 第1の2 ⑷ エ(「本件部長報告は」以下)(11頁)について
原告のいう「本件部長報告」のみでは「判然としない」という限度で、認める。
否認する。
否認する。
キ 第1の2 ⑷ キ(「豪州子会社が」以下)(12頁)について
事実上の主張としては否認し、法律上の主張としては争う。
ク 第1の2 ⑷ ク(「以上のとおり」以下)(12頁)について
争う。
3 第1の3(被告の行動基準及び本件規程に違反する行為について)(12頁以下)について
⑴ 第1の3柱書(「本件通報、追加通報及び」以下)(12頁)について
争う。
⑵ 第1の3 ⑴ (被告が、・・・把握していたこと)(13頁以下)について
認める。
イ 第1の3 ⑴ イ(「本件調査対応協議の後」以下(13頁)について
認める。
認める。
エ 第1の3 ⑴ エ(「被告と本件豪州企業との間で」以下)(13頁)について
認める。
オ 第1の3 ⑴ オ(「契約終了日が」以下)(13頁)について
認める。
カ 第1の3 ⑴ カ(「そのため」以下)(13頁以下)について
認める。
キ 第1の3 ⑴ キ(以上のとおり」以下)(14頁)について
否認する。
ク 第1の3 ⑴ ク(「本件規程1.2(1)に」以下)(14頁)について
否認する。
ケ 第1の3 ⑴ ケ(「少なくとも」以下)(14頁)について
否認する。
⑶ 第1の3 ⑵ (被告が、・・・通知したこと)(14頁以下)について
ア 第1の3 ⑵ ア(「本件内部通報制度の目的は」以下)(14頁以下)について
本件内部通報制度の目的が、被告等における法令等に違反する行為又は違反するおそれのある行為を早期に是正することであることについては、認めるが、その余については、争う。
認める。
ウ 第1の3 ⑵ ウ(「上記イのとおり」以下)(15頁)について
否認する。
エ 第1の3 ⑵ エ(「原告に対して」以下)(15頁)について
事実上の主張については否認し、法律上の主張については争う。
⑷ 第1の3 ⑶ (違反A・・・伏せた行為)(15頁以下)について
ア 第1の3 ⑶ ア(「調査補助者は」以下)(15頁以下)について
認める。
イ 第1の3 ⑶ イ(「また、調査補助者は、原告の質問に」以下)(16頁)について
認める。
ウ 第1の3 ⑶ ウ(「また、調査補助者は、原告に対して」以下)(16頁)について
認める。
否認する。
否認する。
カ 第1の3 ⑶ カ(「以上により」以下)(16頁以下)について
⑸ 第1の3 ⑷ (違反B・・・通知した行為)(17頁以下)について
ア 第1の3 ⑷ ア(「本件部長報告は」以下)(17頁)について
認める。
認める。
否認する。
エ 第1の3 ⑷ エ(「本件部長報告は、『過年度」以下)(17頁)について
原告のいう「本件部長報告」のみでは「判然としない」という限度で、認める。
オ 第1の3 ⑷ オ(「そのため、本件部長報告の」以下)(17頁)について
事実上の主張としては否認し、法律上の主張としては争う。
否認する。
キ 第1の3 ⑷ キ(「そのため、この点についても」以下(18頁)について
事実上の主張としては否認し、法律上の主張としては争う。
ク 第1の3 ⑷ ク(「以上により」以下)(18頁)について
争う。
⑹ 第1の3 ⑸ (違反C・・・実行しなかった行為)(18頁以下)について
否認する。
否認する。
ウ 第1の3 ⑸ ウ(「被告において」以下)(18頁以下)について
一般論としては認める。
エ 第1の3 ⑸ エ(「以上により」以下)(19頁)について
争う。
4 第1の4(原告が・・・被った精神的損害)(19頁以下)について
⑴ 第1の4 ⑴ (被告の行動基準違反及び本件規程違反)(19頁以下)について
(ア)第1段落(「被告は」以下)(19頁)について
事実上の主張としては否認し、法律上の主張としては争う。
本件規程3.6 ⑴ の文言からも明らかなとおり、本件規程3.6 ⑴ は、調査終了時の「法務部長」の職務を定めているのであって、法人たる「被告」の「義務」を定めているのではない。
本件規程3.5の文言からも明らかなとおり、本件規程3.5も、「対応者」、すなわち「法務部長およびコンプライアンス責任者」(本件規程3.4 ⑵ )の職務を定めているのであって、法人たる「被告」の「義務」を定めているのではない。。
行動基準の文言からも明らかなとおり、行動基準も、「ENEOSグループで働く私たち」、すなわち被告を含むENEOSグループの役員及び従業員の義務を定めているのであって、法人たる「被告」の「義務」を定めているのではない。。
(イ)第2段落(「かつ」以下)(19頁)について
認める。
イ 第1の4 ⑴ イ(「ところが」以下)(19頁)について
争う。
ウ 第1の4 ⑴ ウ(以上により」以下)(19頁以下)について
争う。
⑵ 第1の4 ⑵ (業務プロセスがかかわるトラブルに関する状況)(20頁以下)について
ア 第1の4 ⑵ ア(「債権回収業務の」以下)(20頁)について
(ア)第1段落(「債権回収業務の」以下)(20頁)について
一般論としては認める。
(イ)第2段落(「原告が債権回収業務を」以下)(20頁)について
原告が被告のSI推進事業部SI品質保証グループに所属していた平成23年度(2011年度)に、原告の担当していた債権回収業務において、多額(多数)の債権未回収というトラブルが発生したことについては、認めるが、その余については、否認する。
イ 第1の4 ⑵ イ(「多数の債権未回収が」以下)(20頁)について
一般論としては認める。
ウ 第1の4 ⑵ ウ(「しかし」以下)(20頁)について
被告における平成23年度(2011年度)を評価対象期間とする原告の人事評価において、能力評価における「上司コメント」として、原告が「債権回収業務において催促を怠り多数の回収漏れを発生させた」とのコメントがあったこと、当該人事評価における原告の能力評価において、評価項目のすべてがe評価のゼロ点であったこと、当該人事評価における原告の実績評価において、評価項目のすべてがd評価の1点であったことは、いずれも認めるが、その余は、否認する。
エ 第1の4 ⑵ エ(「上記ウの」以下)(20頁)について
認める。
オ 第1の4 ⑵ オ(「上記エの」以下)(20頁)について
不知である。
カ 第1の4 ⑵ カ(「上記オに」以下)(21頁)について
不知である。
キ 第1の4 ⑵ キ(「以上のとおり」以下)(21頁)について
否認する。
ク 第1の4 ⑵ ク(「さらに」以下)(21頁)について
否認する。
⑶ 第1の4 ⑶ (原告が被った精神的損害)(21頁)について
ア 第1の4 ⑶ ア(「経費支払業務の際に請求内容の」以下)(21頁)について
(ア)第1段落(経費支払業務の際に請求内容の」以下)(21頁)について
一般論としては認める。
(イ)第2段落(「原告が上司Aに対して」以下)(21頁)について
否認する。
(ウ)第3段落(「経費支払い業務の際に契約内容を」以下)(21頁)について
否認する。
イ 第1の4 ⑶ イ(「上記 ⑵ で」以下)(21頁以下)について
否認する。
ウ 第1の4 ⑶ ウ「さらに」以下)(22頁)について
否認する。
エ 第1の4 ⑶ エ(「以上の状況のなか」以下)(22頁)について
争う。
オ 第1の4 ⑶ オ(「原告は」以下)(22頁)について
事実上の主張としては否認し、法律上の主張としては争う。
5 第1の5(まとめ)(22頁)について
争う。
6 第1の6(本件訴訟における原告の主張は許される)(22頁以下)について
⑴ 第1の6 ⑴ (既判力が..当たらない)(22頁以下)について
ア 第1の6 ⑴ ア(「前回訴訟における」以下)(22頁)について
概ね認める。
イ 第1の6 ⑴ イ(「一方で」以下)(22頁以下)について
本件訴訟における原告の主張の要約であると思われるため、特に認否はしない。
ただし、原告は、請求原因事実として、訴状においては「被告に本件規程3.6 ⑴ イ又は同ウの違反が存在する」(注2)と主張し、原告第1準備書面でも「被告に本件規程3.6 ⑴ イ又はウに定める事項を通知しなかったことについての本件規程違反が存在する」(注3)と主張していたのであるから、原告が原告第2準備書面において行動基準第1項 ⑴ 、同第11項 ⑶ 、同第12項 ⑶ 、同第14項 ⑶ 及び本件規程3.5の違反を主張する部分は、新たに請求原因事実を追加するものである。
これは、前回訴訟の訴訟物と本件訴訟の訴訟物が同一ではないという原告の立場からすると、訴えの追加的変更(民事訴訟法第143条)になるはずである。
また、前回訴訟の訴訟物と本件訴訟の訴訟物が同一であるという被告の立場からすると、同一の信義則上の義務の違反の評価根拠事実を新たに追加するものであり、弁論終結の直前になって攻撃方法を追加的に提出するものであるから、時機に遅れた攻撃防御方法として却下されるべきである(民事訴訟法第157条第1項)。
ウ 第1の6 ⑴ ウ(「したがって」以下)(23頁)について
争う。
エ 第1の6 ⑴ エ(「また、被告が」以下)(23頁)について
争う。
オ 第1の6 ⑴ オ(「また、原告が」以下)(23頁以下)について
争う。
カ 第1の6 ⑴ カ(「よって」以下)(24頁)について
争う。
⑵ 第1の6 ⑵ (本件訴訟における...許される)(24頁以下)について
ア 第1の6 ⑵ アまず」以下)(24頁)について
争う。
イ 第1の6 ⑵ イ(「この点をおくとしても」以下)(24頁)について
事実上の主張としては否認し、法律上の主張としては争う。
ウ 第1の6 ⑵ ウ(「調査補助者は、原告に対して」以下)(24頁)について
認める。
エ 第1の6 ⑵ エ(「「実際には」以下)(24頁)について
否認する。
オ 第1の6 ⑵ オ(「調査補助者は、令和元年」以下)(24頁以下)について
認める。
カ 第1の6 ⑵ カ(「原告は」以下)(25頁)について
原告が、前回訴訟において、「調査をせず、あるいは不十分であったこと」等について信義則上の義務違反の存在を主張したことについては、認めるが、その余については、不知である。
キ 第1の6 ⑵ キ(「被告が」以下)(25頁)について
認める。
ク 第1の6 ⑵ ク(「原告が前回訴訟を」以下)(25頁)について
原告が前回訴訟を提起する前に甲第21号証における調査補助者による通知の内容を分析できたことは、認めるが、その余は、否認する。
ケ 第1の6 ⑵ ケ(「被告訴訟代理人が」以下)(25頁)について
被告訴訟代理人が令和3年8月31日に原告に対して伝えた内容については、概ね認めるが、その余については、否認する。
コ 第1の6 ⑵ コ(「なお」以下)(25頁以下)について
不知である。
サ 第1の6 ⑵ サ(「前回訴訟の過程において」以下)(26頁)について
認める。
シ 第1の6 ⑵ シ(「前回訴訟に関しては」以下)(26頁)について
争う。
ス 第1の6 ⑵ ス(「よって」以下)(26頁)について
争う。
第3 原告第2準備書面第2による「補正」後の原告の主張に対する認否
原告は、原告第2準備書面の第2(被告準備書面(2)の第2に対する認否)(26頁以下)の中で、原告第1準備書面における原告の主張の一部を「部分的に補正」しているが、被告準備書面(2)における被告の認否及び主張に変更はない。
以上
被告準備書面(2)
被告準備書面(2)
令和6年5月23日
東京簡易裁判所民事第5室6係B 御中
目次
第1 緒言
第2 原告第1準備書面第2(原告の主張)に対する認否
1 第2の1(本件訴訟における・・・遮断されないこと)(10頁以下)について
⑴ 第2の1⑴(答弁書における・・・解釈にすぎない)(10頁以下)について
⑵ 第2の1(2)(原告の主張が・・・遮断されることはない)(11頁以下)について
⑶ 第2の1(3)(甲21の3の・・・事実について)(12頁以下)について
⑷ 第2の1(4)(原告における・・・関係について)(14頁以下)について
⑸ 第2の1(5)(本件訴訟における・・・許される)(15頁以下)について
2 第2の2(被告について・・・成立すること)(16頁以下)について
⑴ 第2の2⑴(本件規程を・・・債務の存在)(16頁以下)について
⑵ 第2の2(2)(本件規程に定める・・・について)(17頁以下)について
⑶ 第2の2(3)(「通報情報に・・・調査」についての考察)(17頁以下)について
⑷ 第2の2(4)(「通報情報に・・・調査」についての考察、つづき)(19頁)について
⑸ 第2の2(5)(本件規程3.6(1)に違反する行為の存在)(20頁以下)について
⑹ 第2の2(6)(原告の損害)(21頁)について
⑺ 第2の2(7)(被告の責任)(22頁)について
本書に用いる用語の意味は、本書に別段の定義のない限り、被告の令和6年4月19日付の「被告準備書面(1)」(以下「被告準備書面(1)」という。)までの被告の主張書面に定義するところによる。
原告の令和6年5月17日付の「原告第1準備書面」(以下「原告第1準備書面」という。)の第2における原告の主張に対する被告の認否は、以下のとおりである。
1 第2の1(本件訴訟における・・・遮断されないこと)(10頁以下)について
⑴ 第2の1⑴(答弁書における・・・解釈にすぎない)(10頁以下)について
ア 第1段落(「被告は、本件訴訟における」以下)(10頁)について
争う。
イ 第2段落(「最高裁平成30年」以下)(10頁)について
争う。
ウ 第3段落(「そして」以下)(10頁)について
認める。
エ 第4段落(「そこで」以下・表5を含む。)(10頁以下)について
争う。
オ 第5段落(「被告における」以下)(11頁)について
被告には、本件内部通報制度の運用を定める本件規程が存在していること、本件通報が、不正行為等によって直接被害を受けた者が不正行為等を通報した場合ではないことについては、それぞれ認めるが、その余は、事実上の主張については否認し、法律上の主張については争う。
力 第6段落(「よって」以下)(11頁)について
意味が不明であるため、認否を留保する。
⑵ 第2の1(2)(原告の主張が・・・遮断されることはない)(11頁以下)について
ア 第1段落(「本件規程に」から「既判力が生じている。」まで)(11頁以下)について
認める。
イ 第2段落(「前回訴訟控訴審判決の」以下)(12頁)について
争う。
答弁書にも述べたとおり(注1)、本件規程は、会社組織内における自律的な規範にとどまるものであって、被告と従業員の間に直接の権利義務又は債権債務を生ぜしめるものではない。本件規程が被告と従業員の間に何らかの権利義務関係を生ぜしめるとすれば、本件規程によって(被告に内部通報制度が設けられることによって)、被告の従業員が内部通報制度の通報窓口に通報をしたときに、当該通報の具体的状況の如何によっては、被告が、当該従業員に対し、当該通報を受け、体制として整備された仕組みに基づいて適切に対応すべき信義則上の義務を負う場合がある、というものである。
とすれば、原告が「前回訴訟主要事実」として掲げる各事実も、それぞれが個別に被告が従業員たる原告に対して負う義務に違反したこと又は被告が従業員たる原告に対して負う債務を履行しなかったことを意味するものではない。むしろ、被告が、従業員たる原告からの本件通報を受けて、原告に対し、前述のような信義則上の義務を負っていた可能性があるところ、原告が「前回訴訟主要事実」として掲げる各事実は、当該信義則上の義務の違反の評価根拠事実となりうるにとどまるし、同様に、原告が「本件訴訟主要事実」として記載する各事実も、原告のいう「前回訴訟主要事実」と同一の通報(本件通報)に関するものである以上は、同一の信義則上の義務の違反の評価根拠事実を新たに追加するものにとどまる。
よって、答弁書にも述べたとおり(注2)、前回訴訟における前回訴訟争点1に係る損害賠償請求も、本件訴訟における損害賠償請求も、被告が原告に対して本件通報に関して負っている同一の信義則上の義務に違反したことを理由として、債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償を請求するものであるから、訴訟物は同一である。
ウ 第3段落(「そして」以下)(12頁)について
争う。
工 第4段落(「さらに」以下)(12頁)について
争う。
オ 第5段落(「以上により」以下)(12頁)について
争う。
力 第6段落(「よって」以下)(12頁)について
争う。
⑶ 第2の1(3)(甲21の3の・・・事実について)(12頁以下)について
ア 第1段落(「本件訴訟で」以下・引用部分を含む。)(12頁以下)
甲第21号証の3が前回訴訟において書証として提出されていなかったこと、甲第21号証の3の電子メールに、原告の引用する内容の記載があることは、それぞれ認めるが、その余は、否認する。
イ 第2段落(「被告と」以下・表6を含む。)(13頁以下)について
表6に記載する事実のうち下線部分以外の事実は認めるが、その余は、事実上の主張としては否認し、法律上の主張としては争う。
表6に記載する事実のうち下線部分の事実は、原告の主張するような因果関係によるものではないし、原告の主張するような「推定」も働かない。
⑷ 第2の1(4)(原告における・・・関係について)(14頁以下)について
ア 第1段落(「表6で」以下)(14頁)について
事実上の主張としては否認し、法律上の主張としては争う。
原告の主張するような因果関係によるものではないし、原告の主張するような「推定」も働かない。
イ 第2段落(「しかし」以下)(14頁)について
原告のいう「本件調査対応協議」が実施されたこと、原告のいう「GST業務移管通知」がなされたこと、GST業務移管通知に基づく業務移管によって、原告は被告と本件豪州企業の間で締結した契約に関する情報から遮断された状態になったことは、それぞれ認めるが、その余は、不知であり又は否認する。
ウ 第3段落(「さらに」以下)(14頁)について
認める。
エ 第4段落(「甲21の3に」以下)(15頁)について
認める。
オ 第5段落(「上記の状況であったため」以下)(15頁)について
不知である。
⑸ 第2の1(5)(本件訴訟における・・・許される)(15頁以下)について
ア 第1段落(「甲21の3に」以下)(15頁)について
甲第21号証の3が前回訴訟において証拠として提出されていないこと、被告が原告に対して私的な訴訟の追行のためにオフィススペース、会社貸与パソコン等を使用することを禁止していたことは、それぞれ認めるが、その余は、不知である。
イ 第2段落(「確かに」以下)(15頁)について
認める。
ウ 第3段落(「原告は」以下)(15頁)について
認める。
エ 第4段落(「これに対し」以下)(15頁)について
認める。
ただし、被告が前回訴訟において被告と本件豪州企業の間の契約書を送付しなかったのは、前回訴訟の第一審の裁判所が令和4年10月27日の第8回弁論準備手続期日において原告の文書送付嘱託の申立てを却下したからである。
オ 第5段落(「本件調査に係る」以下)(15頁以下)について
認める。
確定した前回訴訟控訴審判決も判示するとおり、「本件規程上、調査とは、通報情報に関する事実を確認するための調査と定義され(〔本件規程〕1.2(9))、これは法令等に違反する事実又は違反するおそれのある事実の確認を目的とするものと解される((本件規程)3.5参照)から、必ずしも上記各事実の判断に影響しない事実までもが調査の対象になるとは解されず、また、調査の具体的方法についても、通報者の希望に沿って行うなどとも規定されていないから、被告の合理的裁量に委ねられている」のであるから(注3)、被告は、本件通報に関する調査についても、原告に対し、「具体的に何を調査したのか、及び何を調査しなかったのか」を提示する必要もなかった。
カ 第6段落(「そして」以下)(16頁)について
前回訴訟の第一審及び控訴審の各裁判所が原告のいう「本件調査」に係る調査事項について釈明権を行使しなかったことは認めるが、その余は否認する。
前回訴訟第一審判決及び前回訴訟控訴審判決のいずれも、原告の主張する事実として原告のいう「前回訴訟主要事実」を明示的に摘示したうえ(注4)、原告のいう「前回訴訟主要事実」のそれぞれについて、「信義則上の義務違反があったということはできない」(注5)、「信義則上の義務違反であるなどとは到底いえない」(注6)、「信義則上の義務違反があったものとすることはできない」(注7)などと明示的に判示している。
キ 第7段落(「前回訴訟における」以下)(16頁)について
争う。
原告による被告の社内SNSにおける2020年(令和2年)3月27日の投稿(甲第21号証の1)、被告の調査補助者から原告に対する同年6月25日付の「社長SNS『大田さんの輪』への投稿内容に関する回答について」と題する文書(甲第21号証の1)、原告から被告の調査補助者に対する同月29日発信の電子メール(甲第21号証の2)、及び被告の調査補助者から原告に対する同年7月9日付の「2020年6月29日付Eメールへの回答」と題する文書(甲第21号証の3)での遣り取りは、原告が被告の調査補助者に対して被告と本件豪州企業の間の契約書の記載内容について繰り返し質問をし、被告の調査補助者がこれに回答するというものとなっていたのであるから、原告は、かかる遣り取りを通じて、被告と本件豪州企業の間の契約の記載内容について、2015年(平成27年)に締結されたものと2018年(平成30年)に締結されたものとの違いを明確に認識したはずであり、それによって原告のいうところの「是正措置、再発防止策又は対応策」を「実行した」(注8)という事実も当然認識できたはずである。そして、原告が前回訴訟を提起したのは令和3年5月31日であるから、前回訴訟において原告のいう「本件訴訟主要事実」(原告に対して是正措置、再発防止策又は対応策を実施したとの通知をしなかったという事実(本件規程3.6(1)イ又はウの違反))を主張することも、全く困難ではなかったはずである。
ク 第8段落(「よって」以下)(16頁)について
争う。
2 第2の2(被告について・・・成立すること)(16頁以下)について
⑴ 第2の2⑴(本件規程を・・・債務の存在)(16頁以下)について
ア 第1段落(「被告は」以下)(16頁)について
認める。
イ 第2段落(「本件内部通報制度が」以下)(16頁)について
一般論としては認める。
ウ 第3段落(「労働契約法第7条により」以下)(16頁)について
一般論としては認める。
エ 第4段落(「労働基準法第89条の」以下)(16頁)について
争う。
オ 第5段落(「本件規程も」以下)(16頁)について
争う。
労働契約法第7条にいう「就業規則」と労働基準法第89条にいう「就業規則」とは同じものを意味すると解され(注9)、労働契約法第7条によれば、就業規則は、「労働条件が定められている」ものであることを要すると解されるところ、本件規程は、労働者の「労働条件」を定めているものではない。
力 第6段落(「仮に本件規程の」以下)(17頁)について
争う。
⑵ 第2の2(2)(本件規程に定める・・・について)(17頁以下)について
ア 第1段落(「本件規程1.2(9)では」以下)(17頁)について
認める。
イ 第2段落(「ここで」から「3つであった」まで)(17頁)について
特に争わない。
ウ 第3段落(「上記のうち」以下)(17頁)について
特に認否しない。
⑶ 第2の2(3)(「通報情報に・・・調査」についての考察)(17頁以下)について
ア 第1段落(「原告は」以下)(17頁)について
認める。
イ 第2段落(「これに対し」以下)(17頁以下)について
認める。
ウ 第3段落(「原告と調査補助者との」以下)(18頁)について
事実上の主張としては否認し、法律上の主張としては争う。
確定した前回訴訟控訴審判決も判示するとおり、「被告の内部通報における調査等は、基本的に、不正行為等を早期に発見、是正して被告等の業務の適正化を図るためのもの」であり(注10)、「本件規程上、調査とは、通報情報に関する事実を確認するための調査と定義され(〔本件規程〕1.2(9))、これは法令等に違反する事実又は違反するおそれのある事実の確認を目的とするものと解される(〔本件規程〕3.5参照)から、必ずしも上記各事実の判断に影響しない事実までもが調査の対象になるとは解され」ない(注11)。とすれば、原告のいう「本件支払手続」をした行為に関する調査事項にも、当然には「支払の内容が契約条項又は租税条約などの法令等に基づいていたのか否かについて確認する事項が含まれていた」とはいえない。
⑷ 第2の2(4)(「通報情報に・・・調査」についての考察、つづき)(19頁)について
ア 第1段落(「被告も」以下)(19頁)について
第1文(「被告も」以下)は認めるが、第2文(「このような状況のなかで」以下)は、事実上の主張としては否認し、法律上の主張としては争う。
イ 第2段落(「売買契約において」以下)(19頁)について
第1文(「売買契約において」以下)は認めるが、第2文(「一方で」以下)は、事実上の主張としては否認し、法律上の主張としては争う。
ウ 第3段落(「仮に」以下)(19頁)について
争う。
⑸ 第2の2(5)(本件規程3.6(1)に違反する行為の存在)(20頁以下)について
ア 第1段落(「本件支払手続を」以下)(20頁)について
被告と本件豪州企業の間で締結した契約において役務提供対価にGSTを課す旨の定めが存在していなかったこと、被告が本件通報及び原告のいう「調査補助者に対する追加通報」を受けた後に、調査補助者が原告のいう「上司A」と原告のいう「本件調査対応協議」をしたこと、「本件調査対応協議」の後に、被告と本件豪州企業の間で締結した契約において役務提供対価にGSTを課さない旨の定めが置かれたことは、それぞれ認めるが、その余は、事実上の主張については否認し、法律上の主張については争う。
イ 第2段落(「以上により」以下)(20頁)について
事実上の主張としては否認し、法律上の主張としては争う。
原告の主張するような事実は存在しないし、原告の主張するような「推認」も相当でない。
ウ 第3段落(「本件規程3.6(1)アに」以下)(20頁)について
認める。
エ 第4段落(「この点」以下)(20頁)について
否認する。
「コンプライアンス違反ではない」又は「いずれも不正行為等に該当しない」との調査結果を報告することは、まさしく「法令等に違反する事実または違反するおそれのある事実」が存在しない旨を通知するものにほかならない。
オ 第5段落(「取引上の社会通念に照らすと」以下)(21頁)について
事実上の主張としては否認し、法律上の主張としては争う。
力 第6段落(「以上より」以下)(21頁)について
意味が不明であるが、少なくとも結論については争う。
答弁書にも述べたとおり(注12)、本件通報に関する調査結果は、「法令等に違反する事実が確認された場合」又は「法令等に違反するおそれのある事実が確認された場合」のいずれでもなかったのであるから、本件通報について、本件規程3.6(1)イ及びウに基づく通知は必要でない。
キ 第7段落(「よって」以下)(21頁)について
争う。
不知である。
⑺ 第2の2(7)(被告の責任)(22頁)について
争う。
以上
被告準備書面(1)
被告準備書面(1)
令和6年4月19日
東京簡易裁判所民事第5室6係B 御中
本書に用いる用語の意味は、本書に別段の定義のない限り、被告の令和6年4月15日付の「答弁書」(以下「答弁書」という。)に定義するところによる。
原告の令和6年4月12日付の「訴状訂正申立書」(以下「訴状訂正申立書」という。)による訴状の訂正にもかかわらず(以下、訴状訂正申立書による訂正後の訴状を「訴状」という。)、答弁書における被告の認否及び主張に変更はない。
答弁書
答弁書
令和6年4月15日
東京簡易裁判所民事第5室6係B 御中
目次
第1 本案前の申立て
第2 請求の趣旨に対する答弁
第3 被告の主張
1 本件訴訟における原告の主張
2 前回訴訟における原告の主張と判決の確定
3 前回訴訟の確定判決の既判力による遮断
4 信義則に違反する紛争の蒸し返し
> 5 本件規程3.6⑴イ・ウの違反の不存在
6 信義則上の義務の違反の不存在
7 結論(被告の主張)
第4 訴状第2(請求の原因)(2頁以下)に対する認否
第5 訴状第3(まとめ)(13頁)に対する認否
第6 結語
1 本件訴えを却下する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
との判決を求める。
1 原告の請求を却下する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
との判決を求める。
原告の令和6年2月19日付の「訴状」(以下「訴状」という。)の第2によれば、原告の主張の要旨は、次のとおりであると思われる。
➀ 被告は、被告の「コンプライアンスホットライン規程」(以下「本件規程」という。)(乙第1号証)に基づいて内部通報制度(以下「本件内部通報制度」という。)を設けているところ(注1)、本件規程3.6⑴の規程は、次のとおり定めている(注2)。
「⑴ 法務部長は、調査の終了後、被通報者および調査協力者の名誉、信用、プライバシー等に十分配慮したうえで、実名通報者に対して、次の事項(以下総称して「調査結果等」という。)を通知する。ただし、通報者が通報を望まない場合、通報者への通知が困難である場合その他やむを得ない理由がある場合は、この限りではない。
ア.〔略〕
イ.法令等に違反する事実が確認された場合は、その是正措置および再発防止策
ウ.法令等に違反するおそれのある事実が確認された場合は、その対応策
エ.〔略〕」
➁ 原告は、平成28年9月14日に、本件規程2.1⑴に定める本件内部通報制度の社内通報窓口の電子メールアドレス宛に、原告の関与の下に被告がオーストラリアの法律事務所(以下「本件豪州企業」という。)との取引に関して支払った金額に同国の付加価値税(以下「GST」という。)が含まれていたことなどについて、内部通報(以下「本件通報」という。)を行った(注3)(乙第2号証)。
➂ 被告は、本件通報を受けて、是正措置、再発防止策又は対応策を実施したにもかかわらず、原告に対し、当該事実を通知しなかった(注4)。
➃ よって、被告は、本件規定3.6⑴イ又はウに違反した。
➄ したがって、被告は、原告に対し、債務不履行(民法第415条)又は不法行為(民法第709条)に基づく損害賠償責任を負う。
しかし、一般に、会社の社内規程・社内規則は、労働基準法において就業規則の必要的記載事項とされている事項(同法第89条各号)の定めが就業規則として使用者たる会社と労働者たる従業員との間に効力を生ずる場合、会社と労働組合の間の労働条件等に関する合意が同法第14条に基づく労働協約として会社と従業員との間に効力を生ずる場合などを除いては、会社組織内における自律的な規範であるに過ぎず、会社と従業員の間に何らかの権利義務関係・債権債務関係を生ぜしめるものではないところ、本件規程も、就業規則、労働協約等の一部を構成するものなどではないので、仮に被告が本件規程に違反したとしても、直ちに被告が従業員たる原告に対する何らかの義務に違反し又は何らかの債務を履行しなかったことになるものではない。
よって、仮に被告が本件規程3.6⑴イ又はウに違反していたと仮定しても、当該違反の事実によって、直ちに被告の原告に対する債務不履行又は不法行為となるものではない。
もっとも、一般に、会社が内部通報制度を設けている場合において、従業員が当該内部通報制度の通報窓口に通報をしたときは、当該通報の具体的状況の如何によっては、会社は、当該従業員に対し、当該通報を受け、体制として整備された仕組みに基づいて適切に対応すべき信義則上の義務を負う場合があると解されている(注5)。
そこで、本件訴訟における原告の主張を合理的に解釈すると、上記の原告の主張は、次の主張を含むものであると思われる。
④´ 被告は、本件通報について、本件内部通報制度に基づいて適切に対応すべき信義則上の義務を負っていたところ、本件規程3.6 ⑴ イ又はウに違反したことは、かかる信義則上の義務の違反を構成する。
原告は、令和3年5月31日に、東京地方裁判所において被告に対する損害賠償請求訴訟を提起しており(東京地方裁判所令和3年(ワ)第〇〇〇〇〇号損害賠償請求事件)(以下「前回訴訟」という。)、原告は、前回訴訟においても、原告が被告の本件内部通報制度の通報窓口に対して行った本件通報を含む2件の内部通報について、被告の対応が本件規程の規定に違反しているために信義則上の義務に違反したとして、債務不履行及び不法行為に基づく損害賠償責任を負うとの主張(以下「前回訴訟争点1」という。)をし、被告に対し、債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償を請求していた(乙第3号証(注6))。
そして、前回訴訟の第一審裁判所は、令和4年12月22日に判決(以下「前回訴訟第一審判決」という。)を言い渡しているところ(乙第3号証)、前回訴訟第一審判決は、前回訴訟争点1について、本件通報を含む2件の内部通報に関する被告の対応について、信義則上の義務違反があったとはいえないと判示し(乙第3号証(注7))、その他の争点についても原告の主張はいずれも採用できないとしたうえで、被告は、原告に対し、債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償責任を負わないと結論付け(乙第3号証(注8))、原告の請求を棄却した(乙第3号証(注9))。
原告は、前回訴訟の第一審の判決を不服とし、令和5年1月4日、東京高等裁判所において控訴を提起したが(東京高等裁判所令和5年(ネ)第〇〇〇号損害賠償請求控訴事件)、前回訴訟の控訴審裁判所は、同年6月15日に判決(以下「前回訴訟控訴審判決」という。)を言い渡し(乙第4号証)、前回訴訟控訴審判決は、前回訴訟争点1に関するものを含め、原判決である前回訴訟第一審判決の認定及び判断のとおりであるとして、控訴人たる原告の請求は理由がないと結論付け(乙第4号証(注10))、原告の控訴を棄却した(乙第4号証(注11))。
原告は、前回訴訟控訴審判決も不服とし、令和5年6月28日、最高裁判所において、上告を提起するとともに(最高裁判所令和5年(ネオ)第〇〇〇号上告提起事件)(乙第5号証)、上告受理の申立てをした(最高裁判所令和5年(受)第〇〇〇号上告受理申立事件・令和5年(受)第〇〇〇〇号)(乙第6号証)。上告については、原告が、同年8月28日に、その全部を取り下げたが(乙第7号証)、上告受理申立てについては、最高裁判所が、令和6年1月25日に、上告審として受理しない旨の決定をした(乙第8号証)。これによって、前回訴訟控訴審判決が確定している。
前回訴訟控訴審判決が確定したことにより、前回訴訟の訴訟物の内容をなす権利・法律関係の存否の判断について既判力を生じているため(民事訴訟法第114条第1項)、前回訴訟の控訴審の口頭弁論終結後に生じた新たな事由がない限り、後訴裁判所は、前回訴訟控訴審判決と矛盾する判断をすることが許されなくなり、これを前提として後訴の審判をしなければならないし、前回訴訟の当事者である本件訴訟の原告及び被告も、前回訴訟控訴審判決が判断した権利・法律関係の存否を争うことは許されなくなっている。
この点、前回訴訟における前回訴訟争点1に係る損害賠償請求も、本件訴訟における損害賠償請求も、本件通報に関して被告が原告に対する信義則上の義務に違反したことを理由として債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償を請求するものであるから、訴訟物は同一であるし、原告は、本件訴訟において、前回訴訟の控訴審の口頭弁論終結後に生じた新たな事由を主張しているわけでもない。
よって、本件訴訟における原告の請求は、確定した前回訴訟控訴審判決の既判力によって遮断され、かつ理由がない。
確かに、原告は、前回訴訟においては、本件通報を含む2件の内部通報に関する被告の対応に信義則違反があったことの理由として、調査をせず又は調査が不十分であったこと(本件規程1.2 ⑼ 又は3.4の違反)、調査を実施しない場合の通知をしなかったこと(同規程3.1 ⑴ の違反)、通報情報の厳重な管理を行わなかったこと(同規程3.12の違反)、役員等への報告を適正に行っていなかったこと(同規程3.2 ⑴ 又は3.6 ⑶ の違反)、原告に対して再度の通報が可能であるとの通知をしなかったこと(同規程3.6 ⑴ エの違反)、本件通報を理由に不利益な取扱いをしたこと(同規程2.4 ⑴ 又は3.11 ⑴ の違反)など、多数の本件規程違反を主張していたものの(乙第3号証(注12))、本件訴訟において主張している、原告に対して是正措置、再発防止策又は対応策を実施したとの通知をしなかったこと(同規程3.6 ⑴ イ又はウの違反)については、主張していなかった(乙第3号証)。
しかし、原告は、本件通報後の平成30年11月27日にも、本件内部通報制度の社内通報窓口の電子メールアドレス宛に、本件通報に関連する事実について内部通報(以下「追加通報」という。)を行っており(乙第3号証(注13)・乙第9号証)、前回訴訟においては、本件通報及び追加通報の2件の内部通報に関する被告の対応について、被告に信義則違反があったことの理由として、上記のとおり多数の本件規程違反を主張していたのであり、本件通報に関連する本件規程違反については、ほとんど網羅的な主張を行っていたはずである。
そして、原告は、前回訴訟において、第一審においては、令和3年5月31日付「訴状」(合計11頁)から、同年8月10日付「原告準備書面 ⑴ 」(合計8頁)、同年10月1日付「原告準備書面 ⑵ 」(合計73頁)、令和4年1月21日付「原告準備書面 ⑶ 」(合計50頁)、同年4月15日付「原告準備書面 ⑷ 」(合計4頁)、同年5月13日付「原告準備書面 ⑸ 」(合計9頁)、同年6月13日付原告準備書面 ⑹ 」(合計3頁,別紙18頁)、同年7月1日付「原告準備書面⑺」(合計35頁)まで、控訴審においては、令和5年1月4日付「控訴状」(合計1頁)から、同年3月17日付「控訴理由書」(合計28頁)、同月31日付「控訴理由書⑵」(合計22頁)、同年4月14日付「控訴理由書 ⑶ 」(合計36頁)まで、合計約300頁にも及ぶ膨大な主張を行い、その間、第一審においては、令和3年7月8日の第1回口頭弁論期日から令和4年10月27日の第3回口頭弁論期日まで、3回の口頭弁論期日と8回の弁論準備手続期日が、控訴審においては、令和5年4月18日の1回の口頭弁論期日が、それぞれ行われており、原告には、前回訴訟において、少なくとも本件通報に関連する本件規程違反については、十分過ぎるほどの主張の機会があった。
とすれば、本件訴訟における原告の請求は、実質的には前回訴訟の蒸し返しにほかならず、前回訴訟において本件訴訟における請求をすることにも何ら支障はなかったのであるから、仮に本件訴訟における原告の請求が、確定した前回訴訟控訴審判決の既判力によって遮断されないとしても、本件訴訟における、原告の訴えは、信義則に照らして許されるものではない(注14(最高裁判所昭和51年9月30日判決、最高裁判所民事判例集30巻8号799頁))。
よって、本件訴訟における原告の訴えは、確定した前回訴訟控訴審判決の既判力によって遮断されないとしても、不適法である。
本件規程3.6 ⑴ イ及びウは、それぞれ「法令等に違反する事実が確認された場合」又は「法令等に違反するおそれのある事実が確認された場合」に通知を必要とするものである(乙第1号証)。
この点、本件通報の調査を担当した被告の法務グループは、本件通報について、平成28年12月28日、原告に対し、直ちにコンプライアンス違反とはいえないなどと回答し(乙第3号証(注15)・乙第10号証)、平成29年8月14日、原告に対し、電子メールにて、本件通報について、コンプライアンス違反ではないなどとする調査結果報告(以下「本件調査報告」という。)をしており(乙第3号証(注16)・乙第11号証)(なお、被告は、追加通報についても、令和元年10月25日、原告に対し、口頭及び書面にて、いずれも不正行為等に該当しない旨の調査結果報告をしている(乙第3号証(注17)乙第12号証))、本件通報に関する調査結果は、「法令等に違反する事実が確認された場合」又は「法令等に違反するおそれのある事実が確認された場合」のいずれでもなかったのであるから、本件通報について、本件規程3.6 ⑴ イ及びウに基づく通知は必要でない。
なお、本件規程3.6(エ)も、「不正行為等が是正されない場合、不正行為等が再発するおそれがある場合、または通報を行ったことを理由とした不利益な取扱いを受けた場合は、再度、通報窓口に通報することが可能であること」を通知するものと規定しているところ、原告は、前回訴訟において、本件通報に関する被告の対応について、被告が本件規程3.6(エ)にも違反したと主張していた。しかし、確定した前回訴訟控訴審判決は、やはり、本件調査報告が不正行為等(法令等に違反する行為又は違反するおそれのある行為)がないとするものであったことを理由として、「不正行為等が是正されない場合」及び「不正行為等が再発するおそれがある場合」についての「再度、通報窓口に通報することが可能であること」の通知は必要ないと判示している(乙第3号証(注18))。
よって、本件規程3.6 ⑴ イ及びウに基づく通知は必要でない以上、被告は、被告が原告に対して通知をしていなかったとしても、本件規程3.6 ⑴ イ及びウの違反とはならない。
本件内部通報制度について定めた本件規程では、その目的について、被告及び被告のグループ会社(以下「被告等」という。)における不正行為等(法令等に違反する行為又は違反するおそれのある行為)を早期に是正し、もって被告等のコンプライアンス体制を強化することである旨が規定され(同規程1.1)、調査の結果、法令等に違反する事実等が確認された場合は、是正措置及び再発防止策等を検討し、速やかにこれらを実行する(同規程3.5)などと規定されている一方、通報者に対しては、通報を理由とした不利益取扱いの禁止(同規程2.4.3.11)や調査結果等の通知(同規程3.6 ⑴ )が定められるにとどまっていることに照らすと、本件内部通報制度における調査その他の対応は、基本的に、不正行為等を早期に発見、是正して被告等の業務の適正化を図るためのものであって、通報者個人のためにされるものではないというべきである。
とすれば、不正行為等によって直接被害を受けた者が不正行為等を通報した場合は格別(注19)、そうでない限り、被告が、通報者個人に対し、当然に本件通報に適切に対応すべき信義則上の義務を負うということはできないというべきである。そして、本件通報において原告が通報をした内容は、GSTの還付又はその会計処理に関する疑義であって、それによって原告が直接被害を受けるようなものではないから、被告が、原告に対し、当然に本件通報に適切に対応すべき信義則上の義務を負うということはできない。
以上については、確定した前回訴訟控訴審判決も、同旨の判示をしている(注20)。
よって、仮に本件通報に関する被告の対応に本件規程3.6 ⑴ イ又はウの違反があったと仮定しても、被告が、原告に対し、当然に本件通報に適切に対応すべき信義則上の義務に違反したということはできない。
以上からすると、前記4により、本件訴訟における原告の訴えは、不適法として却下されるべきであり、そうでなくても、前記3、5又は6により、本件訴訟における原告の請求は、理由がないものとして棄却されるべきである。
特に認否しない。
⑴ 第2の2⑴(「被告は」以下)(2頁)について
認める。
「本件当時」というのが、原告が訴状第2の4⑷(3頁)にいう「本件通報」がなされた当時を意味するという前提で、認める。
3 第2の3(被告における業務の適性等を確保するための体制)(2頁)について
認める。
⑴ 第2の4⑴(平成27年11月6日(2015年))(2頁以下)について
ア 第1段落(「原告は、平成27年11月6日」平成27年11月6日」以下)(2頁以下)について認める。
イ 第2段落(「実務上」以下)(3頁)について第1文は認めるが、第2文は不知である。
⑵ 第2の4⑵(平成28年1月7日(2016年))(3頁)について
認める。
⑶ 第2の4⑶(平成28年3月31日(2016年))(3頁)について
原告が平成28年3月31日に上司Aに対して本件GSTの支払に関して確認する電子メールを送付したことは認めるが、その余は、原告の解釈又は心理についての主張であるため、不知である。
⑷ 第2の4⑷(平成28年9月14日(2016年)(3頁以下)について
ア 第1段落(「原告は、平成28年9月14日」以下)(3頁)について
概ね認める。
イ 第2段落(「上記メールアドレスは」以下)(4頁)について
認める。
ウ 第3段落(「被告が本件規程2.1⑴アに」以下)(4頁)について
概ね認める。
エ 第4段落(「本件規程1.2⑸は」以下)(4頁)について
認める。
オ 第5段落(「上記で述べた」以下)(4頁)について
不知である。
カ 第6段落(「ちなみに」以下)(4頁以下)について
事実上の主張としては否認し、法律上の主張としては争う。
確かに、被告の法務部長は、本件通報に係る通報情報を、本件規程3.2⑴各号に列挙する関係役員等に報告していなかったが、それは、法務部長が、本件通報を、本件規程1.2⑸にいう「通報」ではなく、同規程2.3にいう「相談」として取り扱ったためであり、前回訴訟の確定判決も、本件通報の内容が「将来的に法人税法等の法令違反に該当する可能性があるのか、分からないため、相談させていただきたい。」というものだったこと(乙第2号証)に照らすと、かかる取扱いも不合理なものではないと判示している(乙第3号証(注21))。
⑸ 第2の4⑸(平成28年10月3日(2016年))(5頁)について
ア 第1段落(「原告は、平成28年10月3日」以下)(5頁)について
認める。
イ 第2段落(「本件通報においては」以下)(5頁)について
認める。
ウ 第3段落(「そのため、原告は」以下)(5頁)について
不知である。
⑹ 第2の4⑹(平成28年12月16日(2016年))(5頁)について
上司が部下に対して契約内容を確認する行為を咎める事態が発生したことは不知であるが、その余は概ね認める。
⑺ 第2の4⑺(平成28年12月28日(2016年)~平成29年1月6日(2017年))(5頁以下)について
ア 第1段落(「調査補助者は、平成28年12月28日」以下)(6頁)について
認める。
イ 第2段落(「原告は、平成29年1月4日及び同月5日」以下)(6頁)について
概ね認める。
ウ 第3段落(「原告は、上司Aが」以下)(6頁)について
不知である。
⑻ 第2の4⑻(平成29年7月20日(2017年))(6頁)について
認める。
⑼ 第2の4⑼(平成29年7月28日(2017年))(6頁以下)について
ア 第1段落(「上記⑻で述べた」以下)(7頁)について
不知である。
イ 第2段落(「原告は、同年7月28日」以下)(7頁)について
認める。
ウ 第3段落(「上記メールを」以下)(7頁)について
認める。
⑽ 第2の4⑽(平成29年8月14日(2017年))(7頁)について
認める。
⑾ 第2の4⑾(平成29年10月16日(2017年))(7頁以下)について
第1文は認めるが、第2文は不知である。
⑿ 第2の4⑿(平成30年9月13日(2018年))(8頁)について
認める。
⒀ 第2の4⒀(平成30年11月27日(2018年)~平成31年3月20日(2019年))(8頁)について
ア 第1段落(「本件調査報告1において」以下)(8頁)について
原告が平成30年11月27日に本件規程2.1⑴アに定めるメールアドレス宛に内部通報(追加通報)を行ったことは認めるが、その余は不知である。
イ 第2段落(「その後」以下)(8頁)について
認める。
⒁ 第2の4⒁(令和元年10月25日(2019年))(9頁)について
認める。
⒂ 第2の4⒂(令和元年10月29日~12月20日(2019年))(9頁以下)について
概ね認める。
⒃ 第2の4⒃(令和2年3月27日(2020年))(10頁)について
認める。
⒄ 第2の4⒄(令和2年6月25日及び同年7月9日(2020年))(10頁)について
認める。
5 第2の5(被告の本件規程違反の存在)(10頁以下)について
⑴ 第2の5⑴(本件規程3.6 ⑴ について)(10頁以下)について
認める。
⑵ 第2の5⑵(被告の本件規程3.6 ⑴ イ又は同ウ違反の存在)(11頁以下)について
ア 第2の5⑵ア(「上記第3の4 ⑷ ~ ⑺ 、⑼ 及び⒀で述べたとおり」以下)(11頁)について
概ね認める。
イ 第2の5⑵イ(「上記同⑽及び⒁で述べたとおり」以下)(11頁)について
認める。
ウ 第2の5⑵ウ(「上記同⑿及び⒄で述べたとおり」以下)(11頁以下)について
認める。
エ 第2の5⑵エ(「上記ウで述べた」以下)(12頁以下)について
(ア)第1段落(「上記ウで述べた」以下)(12頁以下)について
否認する。
(イ)第2段落(「これにもかかわらず」以下)(13頁)について
認める。
事実上の主張としては否認し、法律上の主張としては争う。
理由は、前記第3の5に詳述したとおりである。
不知である。
争う。
前回訴訟の確定判決が正当に認定及び判断しているとおり、被告は、原告による本件通報及び追加通報のいずれについても、本件内部通報制度に基づいて極めて真摯かつ丁寧に対応しており(注22)、当然のことながら本件規程にも何ら違反していない(注23)。
本件訴訟における原告の訴えが不適法であること及び原告の請求に理由がないことは、いずれも明白であるから、被告としては、貴庁において、速やかに弁論を終結し、速やかに訴え却下又は請求棄却の判決を下されるよう、強く要望するものである。
以上