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背景と事実

1 通報内容と背景

私が通報したのは、日本企業が本来支払う必要のないオーストラリアの消費税(GST)を支払っていたという事実です。上司は「後で還付請求する」と説明していましたが、実際には還付手続きは行われていませんでした。

通報を受けたENEOSは、当該オーストラリア企業との間で、「オーストラリア企業がGSTを請求する権利を有する」との条文を含む契約を締結しました。この対応は、事実上の「是正措置等」に相当しますが、通報者である私には知らされませんでした。

この点について、私は「通知義務違反」として裁判を提起しました。

  • ENEOSの内部通報制度は、「法令違反」だけでなく「契約違反」も対象です。さらに、その「おそれ」も対象となっています。
  • また、「業務上必要なすべての記録および報告を、事実に基づき、正確に、遺漏なく、かつ適時に作成します」といったENEOSが定める「行動基準」の違反も対象とされています。

2 通報者に対する通知

ENEOSは、通報を受けた後、私が知らないうちに、被通報者である上司と接触しました。その後、「業務の移管」を名目に、私を通報に関する情報共有から排除しました。

そして、通報者である私には、次のような通知・説明がなされました。

  • 「何を調査したのか」を説明をせず、「違反はなかった」と通知
  • 「法改正があった」と説明したが、該当する法改正は確認できず
  • 「海外子会社が代行して解決した」との印象を与える不明確な説明

要するに、ENEOSは、通報者を通報に関する情報から排除したうえで、選別的・誘導的な情報提供を行いました。こうした対応は、現行法上、義務違反として裁判で争うことは難しいです。

3 セクハラ不祥事後の通報対応

ENEOSでは、斎藤元社長によるセクハラ不祥事が発覚しました。

新たに就任した宮田社長は、これを契機に、社内改革プロジェクトの立ち上げとともに、内部通報制度の利用を従業員に呼びかけました。

この呼びかけに応じて私は、以前の通報の「解決策」とされた対応に、会計不正の疑いがあるとして、改めて通報(再通報)を行いました。

しかし、返ってきた通知は、「解決済み」というわずか一言だけでした。不正の有無について通知されていないうえ、調査が行われない場合の理由としては極めて不透明です。それでも、現行法上では義務違反とはされません。

4 通報者への不誠実な対応

通報を受けたENEOSは、数々の不適切な対応をとりました。

⑴ 不正確・不明確な通知
 ENEOSは、2016年にGSTの法改正が存在した旨の情報を通報者に共有しました。しかし、該当する「法改正」は未だに特定されていません。要するに、ENEOSは、通報者に対して、「法改正」が存在したかのように認識させたかったようです。
⑵ 不適切な会計処理の疑い
 ENEOSは、通報を受けた後、「解決策」として、海外子会社が本社のGST還付請求を代行したとの名目で、本社に送金を行うという対応をとりました。送金の事実は確認されていますが、実際に還付請求が代行されたことを示す証拠は確認されていません。要するに、不適切な会計処理を通じて、新たな不正が行われた疑いがあります。
⑶ 是正措置等の不通知
 ENEOSは、オーストラリアの消費税(GST)の支払を行っているという通報を受けた後、当該オーストラリア企業との間で、「オーストラリア企業がGSTを課すと判断した場合には、GST込みで請求する権利を有する」という条文を追加した新しい契約を締結しました。この契約は、通報に対する是正措置等の一環といえますが、これを通報者に知らせませんでした。(※通知義務違反)
⑷ すり替えられた調査事項
 通報後に行われた海外子会社による本社への送金に疑念を抱き、その一連の事実関係について改めて通報しました(2度目の通報)。これに対してENEOSは、「GSTの還付をするか否かは任意であり、還付を受けない場合でも不正行為にはあたらない」とする調査結果を通知しました。要するに、ENEOSは、調査事項を還付の任意性という論点にすり替えました。

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