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主張と判決文

判決文、ENEOS側の主張書面を掲載しています。争点は、通報者に対して調査結果を通知する法的義務の有無です。裁判所は、内部通報制度は通報者のために設けられたものではないとして、権利義務関係を生じさせるものとは認められないと判断しました。

裁判における主張の対立点

主張1 調査結果を通知する義務はあるか

  • 通報者:ENEOSは、通報者に対して調査結果を通知する義務がある。その通知の内容は、行動基準 第11項 ⑶ が求める「正確性及び遺漏のなさ」を満たすものでなければならない。
  • ENEOS:コンプライアンスホットライン規程は、従業員に対する義務を定めているのではない。また、通報者に代わって事実関係を調査することを目的としているわけではない。

主張2 CGコードの応諾による責任は?

「CGコード」 東京証券取引所が定める「コーポレートガバナンス・コード」。内部通報制度についても定めています。

  • 通報者:ガバナンス・コードの応諾を社内外に対して自ら宣言している被控訴人は、通報者が制度を信頼して通報を行えるよう適切に「調査結果等の通知」を行う責任を負う立場にある。
  • ENEOS:法的拘束力はなく、CGコードの各原則を実施しない場合でも、罰則が適用されることはなく、公表措置等の対象となる可能性があるというにとどまるものである。

主張3 調査の対象が明確にされない!

  • 通報者:被控訴人は、未だに、本件調査報告における「コンプライアンス違反となる事項ではない」と判断した対象事項の具体的内容を明らかにしていない。
  • ENEOS:本件通報に係る通報用フォームに記載された情報及びその後に原告が調査補助者に提供した情報のうち、「不正行為等」(に該当するか否かが問題となる行為)の内容たる情報である。

主張4 「新たな契約」の締結は通報に対する対応策か

「新たな契約」 ENEOSは、通報を受けた後、オーストラリア企業との間で、「オーストラリア企業がGSTを課すと判断した場合には、GST込みで請求する権利を有する」という条文を追加した新しい契約を締結しました。

  • 通報者:豪州企業との契約締結は、コンプライアンスホットライン規程に定める是正措置及び再発防止策、又は対応策に該当する。
  • ENEOS:豪州企業との契約締結は、コンプライアンスホットライン規程に定める是正措置又は再発防止策等として行ったわけではない。

主張5 GSTの支払は「不正行為等」に該当するか

「不正行為等」 ENEOSの規程類において、「不正行為等」とは、「法令等に違反する行為または違反するおそれのある行為」と定義されています。また、「法令等」には、法令だけではなく契約も含まれるものとして定義されています。

  • 通報者:豪州GST法38条によれば、本件の取引についてGSTを課すことは法令に反すると解釈される。また、契約においてもGSTを課す旨の定めは存在していない。したがって、本件のGSTの支払は「不正行為等」に該当する。
  • ENEOS:GSTの支払が契約内容に基づくものであったか否かは、「不正行為等」があったか否かには直接の関係がないし、GSTの支払が契約内容に基づくものでなかったとしても、「不正行為等」があったことになるわけではない。

主張6 通報者に通知した「GSTの法改正」の存在は?

「GSTの法改正」 ENEOSは、GSTの支払に関する通報を受けた後、「2016年11月以降、GSTの法改正が施行された」との内容を通報者に共有しました。

  • 通報者:オーストラリア税務局(ATO)のウェブサイトで、「GST 2016 amendments」と検索しても、該当する「GSTの法改正」の存在が確認できない。
  • ENEOS:法改正の具体的な内容は、訴訟関係を明瞭にするためのものとはいえないので、ENEOSにおいて回答する必要を認めない。

主張7 海外子会社の送金は、不正な送金か

「海外子会社の送金」 ENEOSは、海外子会社が本社のGST還付請求を代行したとの名目で本社に送金するという対応をとりました。しかし、実際に還付請求が代行されたことを示す証拠は確認されていません。

  • 通報者:本社に対する海外子会社の送金は確認できるものの、豪州子会社が当該代行した証拠がない。したがって、不正な送金である可能性が示唆される。
  • ENEOS:否認し又は不知である。豪州子会社が豪州税務当局から還付を受けていないなどというのは、通報者の邪推でしかない。

主張8 GST還付の任意性は調査事項といえるか

ENEOSは、2度目の通報に対する調査報告として、通報者に**「GSTの還付をするか否かは任意であり、還付を受けないままであったとしても、不正行為等にはあたらない。」**と通知しました。

  • 通報者:還付の任意性の点は、そもそも「不正行為等」の評価の対象になり得ない。したがって、調査事項のすり替えが存在している。
  • ENEOS:GSTの還付申請がされなかったりしたとしても、直ちにコンプライアンス違反となるわけではない。

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