4象限でGARPを見る ― 「成長と割安の両立」銘柄を探す
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「PERが低いから割安」 ― この判断には、成長率という視点が抜けています。
ピーター・リンチが伝説的ファンドを年率 29% で運用しながら広めた GARP(Growth At a Reasonable Price) の考え方を、本記事ではPEG × ROEの 2 軸で実装し、「成長性(グロース)と割安度(バリュー)を両立した銘柄」を見つけ出します。
GARPとは ― 割安(低PEG)と稼ぐ力(高ROE)を両取りする
GARP(Growth At a Reasonable Price) は、割安(低PEG)でありながら、稼ぐ力も高い(高ROE) 銘柄を選ぶ戦略です。
成長株だけを追うと、成長が鈍ったとたんに株価が急落しがち。逆に割安株だけを狙うと、安いまま放置される「万年割安(バリュートラップ)」にはまりがち。GARPはそのちょうど中間で、成長を確かめたうえで、無理のない価格で買う スタンスです。
成長率は 前期実績 → 今期予想の 1 期増益率 です。業績回復局面では成長率が大きく出てPEGが低くなりやすい点に注意(後述のコスモ +47.66% がその例)。
PER 30 倍でも年率 60% 成長ならPEG = 0.5 で超割安、PER 10 倍でも減益予想ならPEGは定義できず対象外(=罠の可能性)。
| 目安 | 判定 |
|---|---|
| ≤ 0.5 | 超割安 |
| ≈ 1.0 | 適正 |
| ≥ 2.0 | 割高 |
| 目安 | 判定 |
|---|---|
| ≥ 15% | 超優良(堀の可能性) |
| ≥ 10% | 優良 |
| ≤ 5% | 構造的低収益(罠警戒) |
⚠️本記事の「予想」表記は、証券会社のアプリのアナリストコンセンサス値。企業公式の業績予想とは異なります。
主要15銘柄の「成長性 × 割安度」
GARPは、PEG(横軸)× ROE(縦軸)でプロットすると、「割安 × 高ROEの理想ゾーン」が一目で分かります。緑がGARP理想ゾーン(PEG ≤ 1.0 かつROE ≥ 10%)です。

- 理想ゾーンに入っている主要銘柄は三井住友だけ ― 割安 × 高ROEの両立は、大型株では稀であることが一目で分かる
- 大型株(水色)はROE帯にばらつきがあるが、PEG ≤ 1.0 の領域には少ない ―「妥当な価格」を厳格に求めると候補が限られる
- 中型株(TOPIX Mid400、背景グレー)にはPEGが極端に低い銘柄が散在 ―「割安だが相対的に注目されにくい」候補は中型株に多い
元売3社で「GARPと株価が逆行」
GARPでは理想ゾーンのコスモ
ここで、石油元売 3 社の銘柄比較を見てみましょう。市況・精製マージン・在庫評価など共通の事業構造を持ちながら、GARPマップ上の位置はまったく異なります。

- ENEOS: PEG 0.22 / ROE 8.0% → バリュー候補だが低収益
- 出光興産: PEG 0.48 / ROE 9.4% → 惜しい位置(ROEがあと一歩)
- コスモエネHD: PEG 0.12 / ROE 12.4% → 🌟GARP理想ゾーン
なぜコスモの株価はGARPと逆行し、下落したか
GARPだけ見ればコスモが魅力的です。では直近 6 ヶ月の株価はどう動いたか ― 3 社のチャートで確かめます。

- GARP理想ゾーンのコスモだけが −6.5% と下落
- ROEで劣るENEOSは +28.3%、出光は +23.2% と上昇 ― GARP評価と株価騰落の順位が逆転
一見矛盾するこの結果は、いくつかの解釈ができます。
- 市況連動セクター特有の罠: 石油元売の業績は原油価格・精製マージンに大きく左右される。コスモの予想EPS成長率 +47.66% はコンセンサスが楽観的すぎる可能性があり、次回下方修正でPEGが一気に跳ね上がる懸念
- 次の業績改善期待を先取り: ENEOS / 出光はGARP的にはイマイチでも、市場が先回りして買いに動いている可能性。GARPが現時点のコンセンサス予想(静的な値)を見るのに対し、株価は予想の変化を先取りする
- 規模と資金の入りやすさ: ENEOSは時価総額が大きく機関投資家の資金が入りやすい一方、コスモは相対的に小型で見落とされやすい
💡 「GARPマップで光る銘柄」と「直近で上がる銘柄」は必ずしも一致せず。GARPは中長期スタンスであり、短期株価とは別次元の話。
まとめ
- GARP = 低PEG × 高ROE で、バリュートラップを避けつつ高品質な割安成長株を選ぶ戦略
- 散布図がGARPの標準的な可視化。PEG × ROEの 2 軸でファンダの位置と市場全体の分布を同時に見られる
- 主要 15 社のうち GARP理想ゾーン入りは三井住友のみ ― 大型株での両立は稀
- 石油元売 3 社では GARP理想値のコスモが直近 6 ヶ月で下落、ENEOS・出光はGARP評価と株価騰落の順位が逆転
公開サイトで試す
この記事のGARPはPEG(成長)とROEの組み合わせですが、公開サイトの散布図では、ROEとPER(稼ぐ力と割安さ)の関係を、商社・石油だけでなく、業種や全社(約500社)に広げて見られます。PEG(成長率)は含みません。また、PERは有価証券報告書に書かれた値(決算期末の時点)で、現在の株価から計算した値ではありません。
Python コード
本記事のチャート画像・アプリ・データ取得・成形スクリプトは、すべて GitHub に公開しています。データは提供元の利用規約により再配布できませんが、データを各自取得すれば、この記事と同じものが再現できます(動かし方はリポジトリの README 参照)。
📌 自作アプリ紹介
PEG × ROEのGARPマップを Streamlit でリアルタイムに操作しながら、銘柄が理想ゾーン(PEG ≤ 1.0 × ROE ≥ 10%)のどこにいるかを確認できます。証券会社のアプリのCSVを配置するだけでTOPIX 500 全銘柄の分布が一目でわかります。
