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マルチファクタースコア ― 7軸で「全方位の優等生」を探す

マルチファクタースコアボード

「PERが低いから買い」「ROEが高いから買い」 ― 単一指標だけのスクリーニングは、思わぬ罠にはまりがちです。

本記事では、Value / Quality / Growth / Consensus / Sentiment / Momentum / Risk という 7 ファクターでマルチな評価を行っていきます。割安・高ROEで評価が高いのに株価は下落、評価が劣るのに上昇 ― そんな ファンダ評価と株価の逆転現象 を、ファンダ・需給・モメンタムを横並びにして定量的に読み解きます。

データ出典
証券会社のアプリ:13指標(EPS / BPS / 配当金 / EV/EBITDA / ROE / ROA / 営業利益率 / 自己資本比率 / 売上高変化率 / 経常利益変化率 / 業績予想修正率(予想) / 経常利益変化率(予想) / 過去3年平均売上高成長率(予想))
yfinance:日足 Close / Volume(2026年5月31日取得)

マルチファクターモデルとは ― 7 つの観点を並列で採点し、総合点に合成する

Fama-French、Carhart、Q-factor など機関投資家のクオンツモデルは「複数ファクターを並列スコア化して合成する」という共通構造を持ちます。本ダッシュボードは 7 ファクターを採用します。

ファクター 観点 主要指標
Value 割安度 PER / PBR / EV/EBITDA / 配当利回り
Quality 収益性・財務健全性 ROE / ROA / 営業利益率 / 自己資本比率
Growth 過去の成長実績 売上高変化率 / 経常利益変化率
Consensus 将来予想の改善度 業績予想修正率 / 経常利益変化率(予想) / 3年売上成長率(予想)
Sentiment 需給の熱量 出来高増加率 / 売買代金増加率
Momentum 株価のトレンド 値上り率 / 52週安値からの上昇率 / MA乖離率
Risk リスク要素(低いほど良い) 60日ボラティリティ / β(対日経平均)

全ファクターが平均以上の銘柄はオールラウンダー(コア候補)、一つだけ突出して低い銘柄はその要因で敬遠する判断材料になる ― これがマルチファクター採点の利点です。

各指標は パーセンタイルランク化(0–100)(市場全体の中で何番目かを 0〜100 点に直す)してから単純平均し、総合スコアを合成します(スコア 70 以上が上位 30% の注目候補)。

主要6銘柄の「銘柄の性格」を見る

7 ファクターを並列で見るにはレーダーチャートが標準です。7 軸の 形のいびつさ で、銘柄の性格(攻め型・守り型・バランス型)が一目で分かります。

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使用データ
証券会社のアプリ:13指標(2026年3月期本決算+翌期会社予想ベース)
yfinance:日足 Close / Volume(2026年5月31日取得)

主要6社レーダー

  • キーエンスは Quality 一点突出の「典型的な高品質・割高銘柄」 ― 形が右上に偏る
  • ソフトバンクGは Risk 軸だけ極端に凹んだ「高リターン高リスク型」
  • KDDI・トヨタは全方位バランス型
銘柄 総合 形状の特徴
ソフトバンクG 54 Momentum 99 / Sentiment 92 / Growth 83 と需給・業績が最強。Risk 0 = ほぼ最高ボラティリティが唯一の弱点
三菱UFJ 53 Momentum 73 / Sentiment 81 が強く、最近の銀行株上昇を反映。一方 Quality 32(銀行はROEが構造的に低い)
キーエンス 55.7 Quality 92(高ROEで別格)だが Value 6(PERが市場上位 6% = 割高)
KDDI 56 バランス型。Risk 69(低ボラ)で長期保有向き
トヨタ 48 全ファクターが 34〜70 で突出した強みなし。Sentiment 12 / Momentum 42 から直近モメンタム弱め
ソニーG 44 Sentiment 23 / Momentum 42 と需給・モメンタムが低迷。Growth 18 で過去の成長実績も振るわない

大型100銘柄の「全体序列」

レーダーが「個別銘柄の性格」を見るのに対し、ヒートマップは「全体序列」を見るツールです。TOPIX大型 100 銘柄内の総合スコア Top 20 を 7 ファクター別に色分けすると、どのファクターで稼いでいるかが一目で分かります。

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使用データ
証券会社のアプリ:13指標(2026年3月期本決算+翌期会社予想ベース)
yfinance:日足 Close / Volume(2026年5月31日取得)

スコアボード Top20

  • ディフェンシブ(JT・アステラス製薬)と需給・業績の強い銘柄(SOMPOHD・ソフトバンク)が混在
  • 業種最大手(ENEOSなど)でも総合 50 で Top 20 圏外 ― 業種大手とマルチファクター評価は別物
  • 見るべきは総合スコアの高さより どのファクターで稼いでいるか ― ディフェンシブ型・需給型・業績型はリスクの性格が違う

元売3社で「割安だけでは決まらない」

石油元売 3 社は そろって割安(Value 70〜92) ですが、総合スコアは コスモ 55・出光 53・ENEOS 50 と僅差で、序列を分けるのは Quality・Growth と需給(Sentiment / Momentum) です。7 ファクターで見直すと、各社が「どこで稼ぎ、どこが弱いか」が一目で分かります。

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使用データ(在庫評価損益調整なし)
証券会社のアプリ:13指標(2026年3月期本決算+翌期会社予想ベース)
yfinance:日足 Close / Volume(2026年5月31日取得)

石油元売3社 ファクター比較

  • コスモエネHD: 3 社で最割安(Value 92)+コンセンサス良好(Consensus 68)で総合は 3 社最高の 55。ただし Quality 41 / Growth 19 と質・成長が弱く、需給も Sentiment 65(売買は活発)に対し Momentum 42 と株価の勢いは中位 ― 割安が総合点を押し上げても、価格はまだ追いついていない
  • ENEOS: Value 70 / Quality 32 と地味だが、Growth 54 + 需給(Sentiment 77 / Momentum 61)で「動いている」。経常利益変化率 +408% という実績がモメンタムを支える ― ただしこの +408% は前期の在庫評価損が反転した「見かけの回復」 で、Growth スコアを実態以上に押し上げている点には注意
  • 出光興産: 需給が 3 社で最も強い(Sentiment 88 / Momentum 77) ― モメンタム先行で買われている型。割安(Value 74)だが Quality 30 / Growth 22 と質・成長は弱め。総合 53
銘柄 総合 Value Qual. Growth Cons. Sent. Mom. Risk
コスモエネHD 55 92 41 19 68 65 42 59
ENEOS 50 70 32 54 22 77 61 32
出光興産 53 74 30 22 25 88 77 54

💡 元売 3 社は そろって割安(Value 70〜92)でも総合は僅差。差を生むのは 質(Quality)・成長(Growth)・需給(Sentiment / Momentum) ― 最割安のコスモ(総合最高)も Quality 41 / Growth 19 が弱く Momentum 42 と中位で、割安だけでは株価の勢いに直結しない。ファンダだけ・需給だけでは見えない構図が一目で分かるのがマルチファクター採点の価値。

まとめ

  • 単一指標スクリーニングの落とし穴(バリュー・トラップ / 成長停止 / 過熱)を 7 ファクター統合採点 で自動回避できる
  • レーダーチャートが標準的な可視化。7 軸の形のいびつさで銘柄の性格(攻め型・守り型・バランス型)が一目で分かる
  • 石油元売3社は 割安(Value)はそろって高いが総合は僅差 ― 質・成長・需給の差で序列がつき、最割安のコスモ(総合最高 55)でも Momentum は中位で株価の勢いに欠ける
  • 使い方は 総合スコアの高さより「どのファクターで稼いでいるか」(型)を見ること ― ディフェンシブ型・需給型・業績型はリスクの性格が違う

公開サイトで試す

7軸のうち、ROE・利益率・自己資本比率といった財務の軸は、有価証券報告書の数値で、公開サイトでも並べて見られます。株価やモメンタムなど、価格に基づく軸は含みません。有報ベースなので、記事の数値とは、期や定義が異なる場合があります。

Python コード

本記事のチャート画像・アプリ・データ取得・成形スクリプトは、すべて GitHub に公開しています。データは提供元の利用規約により再配布できませんが、データを各自取得すれば、この記事と同じものが再現できます(動かし方はリポジトリの README 参照)。

📌 自作アプリ紹介

― 7 ファクターレーダーをブラウザで並べて見る ―

7 ファクター(Value / Quality / Growth / Consensus / Sentiment / Momentum / Risk)のレーダーチャートを銘柄ごとにブラウザで並べて表示します。銘柄コードを入力するだけで記事中のスコアボードが自分の環境でそのまま動き、「全方位優等生」候補を対話的に絞り込めます。

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