CARで見る「決算の効き」 ― 元売・商社 主要5社の市場反応を検証
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決算の評価について視点を逆転し、決算発表後に市場がどう反応したか ― 超過リターン(CAR)― を測ります。決算サプライズの方向へ株価がじわじわ動き続ける傾向はありますが、その効き方は決算ごとに大きく異なります。
そこで本記事では、元売3社(ENEOS/出光/コスモエネHD)に総合商社2社(丸紅/双日)を加えた主要5社を対象に、TOPIX超過に加えてセクターETF超過も併記する CAR で、業界の追い風を除いた 個別決算の効き を検証します。
CARとは ― 「業界の追い風」を引いて、個別決算の実力だけを残す
ポイントは ベンチマークを 2 本立てにする こと。TOPIX(市場全体)に加えて、セクターETF(業界の動き)も差し引きます。こうすると「業界全体が好調だから上がっただけ」と「個別決算が本当に効いた」を分けられます。
- 2 つのウィンドウで見る ― 発表直後の [-1,+1]=初動 と、[-1,+20]=約 1 ヶ月(決算後にじわじわ続く反応まで)
- 発表が場中か引け後かで起点(t=0)が 1 日ずれ、間違えると符号さえ逆になる。開示時刻から t=0 を判定し、株式分割も補正して算出(手順はコード)
例で見る ― 主要 5 社の決算の効き
ここでは 5 社それぞれの 前期(2025/3 期)サイクルの決算ごと(24/3 期通期〜25/3 期通期)に、決算後の超過リターン(CAR[-1,+20])を時系列で並べます。棒は 2 本 ― ━ TOPIX超過(市場全体を差し引いた分)と ━ セクター超過(同業の動きも差し引いた、純粋な個別反応)です。上に伸びれば決算後に買われ、下なら売られた ことを表します。縦軸の目盛りは社ごとに異なる点に注意しつつ、事前のファンダ評価が市場の反応に表れるかを見ます(最新の 2026/3 期サイクルの反応は記事 3-2 で扱います)。

- 丸紅(8002):直近通期で TOPIX超過 +8.94% / セクター超過 +8.76% ― 業界全体ではなく 個別決算が効いた典型(次世代事業 +127% が評価された)。※これは前期 2025/3 期の話。最新 2026/3 期は市場の反応が一変し、その乖離は 3-2 で扱う
- ENEOS(5020):2024-05〜2025-02 に 4 連続CARプラス([-1,+20] = +10.09 → +7.44 → +5.62 → +5.43%、ファンダ最上位の見立てと一致)。ところが 2025-03-28 の業績予想修正で −13.89% と急転 ― ただし主因は のれん減損・在庫影響・JX金属IPOという構造/会計要因で、利益の質劣化と決めつけるのは早計(営業CFは 3 年で純利益の 114%)
- 双日(2768):健全評価ながら市場反応はバラつき、丸紅ほどの明確な上昇トレンドは出ていない ― 評価と市場が必ずしも一致しない例
事前のファンダ評価と市場の反応は おおむね一致しました。CARは「評価が当たっていたか」を後から確かめる物差しになります。ただしENEOSの単発の急落のように、要因(構造か・会計か・実力か)を分解してからでないと判断を誤ります。
まとめ
- 決算分析の多くが 「中身」 を見るのに対し、本記事は 「市場の反応」 をCARで測った ― TOPIX超過+セクターETF超過の 2 本立てで、「業界の追い風」と「個別決算の実力」を分離
- 丸紅:前期 +8.94%(セクター超過 +8.76%)で「健全 + 次世代事業成長」の評価と整合。ENEOS:4 連続プラス → 予想修正で −13.89%、ただし主因は構造/会計要因のため断定せず継続観察
- 事前評価と市場反応はおおむね一致 ― ただし単発の急落は要因を分解してから。次章は、この物差しを「似た決算グループ」に置き換え、個別ショックの検出(3-1・3-2)へ発展させる
Python コード
本記事のチャート画像・データ取得・成形スクリプトは、すべて GitHub に公開しています。CAR計算の実装(開示時刻からの t=0 判定・TOPIX/セクターETF超過の併記・連続株式分割の補正)は、リポジトリの README にまとめています。データは提供元の利用規約により再配布できませんが、データを各自取得すれば、この記事と同じものが再現できます。