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K-NN 分類 ― 似た決算群から外れた「個別ショック」を検出

K-NN分類

前回(3-1)の「似た決算」を物差しに、各銘柄の決算後の株価反応(CAR)を K-NN で分類します ― 似た者と同じ「典型」か、群れから大きく外れた「個別ショック」か。狙いは当てることではなく、外れた銘柄=真っ先にIRを確認すべき銘柄を洗い出すことです。

データ出典
TDnet:決算短信XBRLから作成した決算10次元特徴量(3-1で生成、287銘柄)
yfinance+TDnet:2026/3期CAR(events_2026)

K-NN で「典型 / 個別ショック」を仕分ける

ある銘柄の「似た決算 Top-K」を集め、その群れの反応(CAR)を "ふつうの目安" とします。自身がその目安に 近ければ「典型」、大きく外れれば「個別ショック」 ― これを 287 銘柄まとめて 仕分けます。

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パイプライン全体

  • 対象は特徴量が 7 個以上そろう 287 銘柄、2026/3 期の実績CARと突き合わせ
  • そもそも値や方向は当てられません ― 群れの平均を予測値にしても 相関 r≈−0.03・方向一致率 50.9%(コイン投げ)で、全銘柄の単純平均にも負ける。だから「当てる」のは捨て、「外れの大小」だけを使います
  • 外れるのは、**M&A・減損・ガイダンス・説明会IRなど「数字に表れない事情」**があるから。逆に言えば、群れから大きく外れた銘柄ほど、その事情を真っ先に確認する価値があります

抽出された「個別ショック」 ― ポジ / ネガ Top-10

群れ(近傍 Top-15)の反応から大きく外れた銘柄を、上下それぞれ並べます。数字の上では同業並みなのに、市場が予想外の評価をした銘柄 ― 投資判断で 真っ先にIR・説明会を確認すべき 群れです。

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使用データ(決算特徴量は在庫評価損益調整なし)
TDnet(決算短信XBRL):10次元特徴量(287銘柄、2026年3月期、類似群の選定に使用)
yfinance:日足、決算後株価反応CAR[-1,+5]

個別ショック Top-10

ポジティブショック Top-5(市場が想定より大幅好評価):

コード 会社名 近傍平均 実績 外れ
7236 ティラド -0.5% +62.5% +63.0pp
2737 トーメンデバイス -5.0% +30.0% +35.0pp
2371 カカクコム -4.8% +29.4% +34.2pp
6516 山洋電気 +2.3% +35.1% +32.8pp
6882 三社電機製作所 -1.6% +29.7% +31.3pp

いずれも 数字は平凡(YoY +5〜+20%)なのに、市場は +30〜60% で歓迎 した銘柄。M&A 期待・新製品・業界転換の本命視など、数字に表れない "物語" が背後にある可能性が高い ― 類似検索だけでは見つからない「説明会・追加IRで初めて見える買い材料」です。

ネガティブショック Top-5(市場が想定より大幅悪評価):

コード 会社名 近傍平均 実績 外れ
5906 エムケー精工 +5.0% -23.2% -28.2pp
9629 ピー・シー・エー -0.5% -23.5% -23.0pp
6702 富士通 +4.4% -16.8% -21.2pp
6469 放電精密加工研究所 +6.4% -14.9% -21.1pp
1720 東急建設 +2.1% -18.7% -20.6pp

逆に、数字は平凡〜やや良いのに、市場が大きく売った 銘柄。ガイダンス下方修正・減損・説明会での慎重コメント・コンセンサス割れなど、「資料を読み込まないと見えない警戒材料」 が反映された可能性が高い。

主要銘柄の仕分け ― 丸紅・双日・ENEOS

銘柄 実績CAR 窓 近傍平均 外れ 仕分け
丸紅(8002) −9.39% [−1, +5] +2.43% −11.82pp 個別ショック(ネガ)
双日(2768) −4.25% [−1, +5] +2.54% −6.79pp 軽いネガショック
ENEOS(5020) −4.68% [−1, +5] −2.30% −2.37pp 典型に近い(初動 +1.36% 後 5 日で反転)
  • 丸紅・双日は「数字より市場の評価がネガティブ」 ― 利益の質・予想・セグメントで「健全」と評価した銘柄が、2026/3 期は市場で売られた。丸紅は 2-6 で見た「次世代事業 +127% × 金融 −54.7% の二極化」や、その利益化までの時間を、市場が説明会で問い直した可能性
  • ENEOSの外れ −2.37pp は小さく、個別ショック上位(外れ ±10pp 以上)にも入らない=典型寄り。初動 +1.36% が 5 日で −4.68% に反転したのは、2-6 で見た「高収益セグメントの正常化」が後追いで認識されたため。数字でおおむね説明がつく事例
    • ※ ただし「似た決算」の近傍選定に使う決算特徴量は、ENEOSでは 前期の在庫評価損が反転した急回復 を含む。"典型" に収まること自体が在庫込みプロファイル前提である点は割り引いて読む

ここに本記事の芯があります ― 大事なのは値を当てることではなく、群れからどれだけ外れたか。外れが小さければ「数字で読める=AIに足す情報は薄い」、大きければ「数字の外の材料を急いで集めよ」。この 2 つに振り分ける のが、K-NN の使いどころです。

💡 APIとコストについて:この分析は、実際の embedding API・LLM APIを一度も呼んでいません(要約・embedding は Claude が代理で出力しています)。仮に実APIで全 8,049 イベントを要約・embedding 化しても、Haiku 4.5 なら 約 3,100 円 の見積もりで収まります。


まとめ

  • K-NN で銘柄を「典型 / 個別ショック」に仕分ける ― 似た決算 Top-K の反応を "ふつうの目安" にして、そこから大きく外れた銘柄を抽出する
  • 値や方向そのものは当てない ― 数字の特徴だけでCARを予測するのは構造的に無理(r≈−0.03)。だから「当てる」のではなく「外れを拾う」
  • ポジ例 ティラド +63pp・カカクコム +34pp(物語で動いた)/ネガ例 エムケー精工 −28pp・ピー・シー・エー −23pp(資料で見える警戒材料)。主要銘柄では 丸紅 −9.39% / 双日 −4.25% が 個別ショック、ENEOS −4.68%(外れ −2.37pp)は 典型寄り
  • 使い方は 外れ大=要IR確認、外れ小=数字で読める の二分。AIは予言の魔法ではなく、異変を見つける仕分け器

機械学習分析編は今後も手法を追加していく予定です。データ駆動投資の差別化要素は「データを使う」から「データを持つ・整理する・AIと組み合わせる」へ ― この分析がそのスタート地点になれば幸いです。


公開サイトで試す

記事の仕分けで取り上げた丸紅・双日・ENEOSは、公開サイトでも、最新期の財務を並べて見比べられます。K-NN の仕分けや株価の反応は含みません。有報ベースなので、記事の数値とは、期や定義が異なる場合があります。

Python コード

本記事のチャート画像・データ取得・成形スクリプトは、すべて GitHub に公開しています。**K-NN 分類の実装(似た決算 Top-K・近傍平均からの外れ量・個別ショック抽出・K=5/15/30 比較)**は、リポジトリの README にまとめています。データは提供元の利用規約により再配布できませんが、データを各自取得すれば、この記事と同じものが再現できます。